研究課題/領域番号 |
17H01782
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
小谷 賢太郎 関西大学, システム理工学部, 教授 (80288795)
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研究分担者 |
岡田 明 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (30158810)
佐藤 誠 首都大学東京, システムデザイン研究科, 特任教授 (50114872)
山本 栄 東京理科大学, 工学部情報工学科, 嘱託教授 (50132486)
山口 武彦 諏訪東京理科大学, 工学部コンピュータメディア工学科, 講師 (50713442)
原田 哲也 東京理科大学, 基礎工学部電子応用工学科, 教授 (80189703)
小林 大二 千歳科学技術大学, 理工学部, 准教授 (90318220)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バーチャルリアリティ / 触覚 |
研究実績の概要 |
本研究ではVR環境としてハプティクスの展開を研究してきたグループと動作分析や生体計測によるアプローチを中心とした人間工学の研究グループの共同研究体制によりSoA, SoOに基づく暗黙知の形成過程のモデル化を図り,没入型VR空間構築のための視覚-ハプティクス提示環境のガイドライン設計を行っている.本年度は現有する視覚―力覚提示装置を用いて構成できるベースアバタを設計し,先行研究により得られている視覚,力覚,およびその相互作用を独立変数として条件を設定できるよう実験計画を検討してきた.また,生理計測としては筋電図,行動計測としては動作精度,反応時間を計測し,調整を行った.視覚―力覚提示装置を駆動させた状態で,すべてセンサを装着し,テスト信号を計測し,ノイズの原因について検討を行った.ワイヤの取り回しが動作に影響がないかを確認したうえで,実験用のインストラクションを作成した. 個々のグループにおける実験ではボールキャッチングタスクを例として,VR空間と現実空間でのタスク実行時の筋電図を比較することを試みた.両社の比較の結果,筋活動量は実環境のタスクに比べてVRタスクのほうが筋活動が小さく,提示力覚量の再調整が必要であることが明らかになった.また,ボールキャッチングタスク開始から手部にボールが接触するまでの傾向が類似していたことから,同一の加速度条件下ではVR空間でボールキャッチングタスクを再現することは可能であると結論づけた. また,タブレット型デバイス(SPIDAR-TABLET)上に表現された2次元地図に付加された触力覚の情報がより詳細な地理情報への理解を深めるかについて実験的に調査した結果,力覚が他のモダリティに比べて標高情報の理解が深いことが明らかになり,2次元地図に表示されない情報を提示する仕組みとして力触覚の提示はその理解を促進することが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請当初の本年度の目的として,(1)SoA/SoOの規定要因の導出,(2)生体計測系の準備,提示装置への組み込みと調整,(3)実験用視覚-力覚提示装置および動作計測環境の設計,構築準備,(4)タスク分類とモデルタスクの設計,(5)モデルタスクを用いたSoA/SoO評価実験,(6)実験用ワイヤ駆動型力覚提示デバイスの拡張,(7)タスクごとの生体計測条件の調整と温度提示デバイスの制作・実装,の7項目を挙げていた.このうち,(1),(2)については実際にSPIDARを含むVR環境構築の完成と筋活動の計測プロトコル,およびデータ解析手法を明確にした.これらの成果については2018年度において3件の国際学会での発表としてまとめることができた.また,昨年度末からさらに力覚提示系の再構築を前もって進めており,本年度追加実験を進める予定としている.エンドエフェクタについても複数種構築し,トラッキングタスク時に実際に用いた実験を進め,この成果についても国際学会で報告を予定している.さらに,体性感覚フィードバックに関するテーマについてもタッチパネル使用時における手指動作の世代間比較の実験では手指動作や最大接触力,誤答数などの比較を行うことで加齢に伴う手指の巧緻性の低下について観察でき,接触力の高齢者の優位性についても確認することができた.またセンサーを用いた体性感覚フィードバックの評価についても実験装置の構築と評価実験を行い,タッチパッドを例にとり保持側の手による保持圧の分布パターンを精度良く求めることに成功している. 当初目的(7)では温度情報を力覚情報に付加することを検討していた.この開発については現状進められていないが,本年度はこの点についても拡張させていく予定である. 以上のことから,本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は前年度の課題であった,動作分析,タイムスタディの手法により,VR環境を拡張できるモデルタスクを提案し,基準動作をもとに動作要素を抽出しデータ化することや,触覚情報に付加させる形で,対象に仮想的に接触した際にグリップ部に温度提示を行うための温冷感情報提示デバイスを作成する.また,当初から予定しているエンドエフェクタを含む拡張デバイスと生体計測系の再構成とチューニングをプロジェクトメンバーの中心課題として行い,タスクデータの計測と解析,アバタとの関連性の評価,およびモーションキャプチャを用いたモデルタスクの動作精度の確認を経て,本プロジェクトの主眼であるSoA/SoO(今後はSoE(Sense of Enbodimentと呼ぶことにする))の評価実験に取り掛かり,これらの実験結果をもとに,SoEに基づく暗黙知の形成過程のモデル化を検討する予定である.また,前年度の成果はHCI International 2018でOrganized Sessionにおいて各研究者が報告する準備を進めている.このセッションでは,広く海外からの研究者と本研究の成果の公開と議論を重ねる機会を設けている. 前年度は合計4回の全体会議と互いの研究機関へ出向いて装置の統合と試験データ計測を繰り返し行ってきたが,本年度も昨年同様4回程度の全体会議と共同実験を積み重ね,成果を得る予定である. また,これまでは各研究者のそれぞれの研究を互いに統合させながらテストデータを積み重ねることが中心であったが,それらのノウハウが昨年度に蓄積され,本年度は実際のVR環境における生体計測と人間工学評価といった本課題の中心的課題に入っていく.研究成果の公開,論文執筆などについても積極的に検討していく予定である.
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