研究課題/領域番号 |
17H01783
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
瀧川 一学 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 研究員 (10374597)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 機械学習 / グラフデータ |
研究実績の概要 |
本年度は研究代表者の異動に伴う研究環境の変化に応じて、実問題から生じるグラフデータの特徴表現設計の実践的課題に主として注力した。また本年度は顕著な研究動向の変化として、グラフデータを直接入力に取るグラフニューラルネットワーク(GNN)の研究が多数発表された。大変興味深いことに化学構造の表現やSNS等のネットワークデータの表現だけではなく、物理シミュレーションや純粋な組合せ最適化問題など幅広い問題を解く汎用入力表現としてのグラフが探求されており、その特性や限界も理解されはじめた。本課題でもこのようなより広い文脈からグラフデータとその表現の問題を捉え直し、研究・検討を行った。 特に有機低分子だけではなくそれ以外の、無機材料や高分子、分子と分子の相互作用ネットワーク、グラフの変化を扱う化学反応、化学反応の出発物質から遷移状態を経て生成物質に至る経路そのもののネットワーク的なバリエーションである化学反応経路など、実問題のデータに関するグラフデータとその特徴表現・機械学習研究を行った。また、組合せ最適化の問題や機械学習モデル自体がもつグラフ構造(ニューラルネットワークの構造や決定森の構造など)に関する表現・分析の検討や付随するアルゴリズム研究も行った。 共同研究や昨年度の成果も含めて論文発表や講演も行った。特に、グラフ特徴表現・機械学習に関しては、入力グラフの各頂点や辺に付与する隠れ変数ベクトル自体を問題の特性に応じてAttention構造で適応的に学習するGNNについて国際ワークショップで発表した。また分子間相互作用ネットワークなど、一つ一つの構成要素自身がグラフ表現を持ち、その要素自体がまたネットワークをなす汎用的設定で、GNN(Dual graph convolution)を学習する共同研究について国際シンポジウムで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究代表者の異動による研究環境の変化、および、機械学習分野におけるグラフニューラルネットワーク研究の大隆盛という研究分野の変化に合わせて、想定するグラフ研究対象や適用できる問題を広く再検討し、興味深い多数の適応例・汎用的な視野と技術課題や、さらに展開が期待できる共同研究のシードを得ることができた。また今までに得られている研究結果の国際発表や論文発表も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、全列挙型あるいは化学の分野の制約列挙型の特徴表現を機械学習するアプローチとGNNによる様々なアプローチとの本質的な挙動や違いのより詳細な理解を進め、また、化学を主とする様々な実問題での有効性を検証する予定である。また、最終年度であることから得られている様々な展開的な研究課題を整理し次の研究につなげる検討を成果発表と合わせて実施したい。
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