研究課題/領域番号 |
17H01798
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
田向 権 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (90432955)
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研究分担者 |
森江 隆 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (20294530)
末竹 規哲 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (80334051)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脳型計算機 / FPGA / ディジタルハードウェア / 論理回路 / 深層学習 / Robot Operating System / RoboCup / ホームロボット |
研究実績の概要 |
本研究は,ホームロボットへ応用可能な組込指向脳型計算機の実現を目指すもので,理論,回路,応用の3本の柱から構成される. 理論班では,ハードウェア指向Dropoutの回帰型ニューラルネットワークへの適用,複数精度(2値,3値,32bit)で構成されるニューラルネットワークの構築法,および,ハードウェア指向深層自己組織化マップを提案した.また,ロボットの視覚応用を目指した,深度画像とRGB画像を組み合わせた2値化畳み込みニューラルネットワークを提案した.これらの提案により,組込の際に必要となるメモリ量と回路量を大きく削減できることを示した. 回路班では,各種ニューラルネットワークの基本回路をハードウェア記述言語Verilog HDLや高位合成を用いて設計した.さらに,大規模Field Programmable Gate Array(FPGA)ボードを新規に導入,時分割積和演算方式カオスボルツマンマシンをFPGAへ構築,最適化問題へと適用し,その有効性を確認した. 応用班では,ホームロボットの研究開発を継続的に実施した.Robot Operating SystemからFPGA内部の仮想回路へ簡便にアクセスできるROS-FPGAに人物追跡アプリケーションを実装し,その有効性を確認した.本成果は回路とシステムの分野で世界最大の国際会議であるISCAS2018のLive demoにて発表した. また,本研究の成果をホームロボットへ集約,RoboCup Japan Open 優勝,世界大会RoboCup @Home Domestic Standard Platform League において昨年度に引き続き優勝,さらに,World Robot Summit 2018 においても優勝し,世界大会3連覇を達成,ホームロボットの知能に係わる研究開発成果が高く評価され,経済産業大臣賞を受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理論班,回路班,応用班のいずれも計画の通り順調に進展している.理論班では各種ハードウェア指向アルゴリズムの提案が順調に進んでいる.回路班では,昨年度遅れが出ていた新型FPGAの導入と周辺開発環境の整備が順調に進み,カオスボルツマンマシンを題材に,大規模回路実装に関する基礎的な実験が完了した.今後はこのノウハウを横展開し,各種ニューラルネットワークの実装を進めていく.応用班では,理論,回路を繋ぐ成果が得られ始めており,3本の柱が融合する形でのホームロボットの組込知能実現へと着実に近づいている. その一端がRoboCup Japan Open 2018 @Home Open Platform League 優勝,同 Domestic Standard Platform League 準優勝に加えて,世界大会であるRoboCup 2017, 2018, World Robot Summit優勝と世界大会3連覇への達成へと繋がっている.本研究計画の成果を集約したホームロボットの性能が世界トップレベルであることを競技会を通して実証できたと共に,その成果を広く社会に知らせることにも成功している.また,2018年度は経済産業大臣賞,人工知能学会賞,日本ロボット学会特別賞の受賞もあり,本研究計画の成果は,政府や関連学会からも高い評価を受けている. 申請時の計画では,2019年のRoboCup,2020年のWorld Robot Summitにてデモ発表を実施予定であったが,前倒しで世界大会への出場が実現出来ていると共に,世界大会3連覇を含む高成績などから総合的に判断して,本研究は当初の計画以上に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き研究計画に従い,理論,回路,応用の3本の柱で研究を進める.ロボット上で稼働可能なFPGAボード上で,深層学習をはじめとする知的処理を含むシステム実装を目指したハードウェア開発環境整備を行う.また,計画最終年度ということもあるので,RoboCupで用いるホームロボットの研究開発にも重点を置き,本研究計画で得られた成果の集約を進めて実機評価に力を入れると共に,現状の課題の洗い出しにも力を入れ,次期の研究計画へと繋がるような研究の推進方策を取るものとする.
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