研究課題/領域番号 |
17H01808
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
辻村 誠一 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (10381154)
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研究分担者 |
鯉田 孝和 豊橋技術科学大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10455222)
森田 健 福岡女子大学, 人間環境科学研究科, 教授 (20326474)
橋口 周平 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (40295275)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メラノプシン細胞 / 錐体細胞 |
研究実績の概要 |
平成29年度には多原色光源表示装置を用いて、瞳孔反射経路における機能解明を実施した。メラノプシン細胞は瞳孔径を制御していることが知られている(e.g.Tsujimura et al. 2010)。本研究で用いる多原色光源表示装置では、任意の刺激パターンの提示が可能である。様々な時空間テスト刺激パターンを提示し、また、同時にメラノプシン細胞や錐体細胞への刺激量を可変することによって、非撮像系経路信号と瞳孔径変化との機能的関連性について検証した。測定は継続中である。本装置を用いることによって錐体への刺激量とメラノプシン細胞への刺激量を独立に制御することにより、瞳孔の対光反射メカニズムを駆動している脳内の明るさ符号化処理がどのように錐体細胞起因の信号とメラノプシン細胞起因の信号を統合しているかを実験的に検証することが可能である。 さらに瞳孔の対光反射メカニズムにおけるメラノプシン細胞と錐体細胞間の潜在的な位相差を測定する実験をおこなった。メラノプシン細胞は錐体細胞よりもその反応が遅いと言われている。瞳孔の対光反射の潜時を測定した実験の成果の一部は、7月に台湾で開催されたアジアパシフィック視覚会議(APCV)、および9月に開催された国際瞳孔学会の招待講演で発表した。国際瞳孔学会では多くの研究者から貴重な意見を得た。平成29年度の研究成果は論文1件、学会発表5件である。学会発表5件中、1件は国際会議の基調講演(招待講演)であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度には多原色光源表示装置を用いて、瞳孔反射経路における機能解明を実施した。メラノプシン細胞は瞳孔径を制御していることが知られている(e.g.Tsujimura et al. 2010)。本研究で用いる多原色光源表示装置では、任意の刺激パターンの提示が可能である。本装置を用いて様々な時空間テスト刺激パターンを提示し、また、同時にメラノプシン細胞や錐体細胞への刺激量を可変することによって、非撮像系経路信号と瞳孔径変化との機能的関連性について検証した。測定は継続中である。 加えて現在瞳孔反応を駆動しているメラノプシン細胞と錐体細胞間の潜在的な位相差を測定する実験をおこなった。メラノプシン細胞は錐体細胞よりもその反応潜時が長いと報告されている。一方でその反応潜時を測定した研究はない。これらの実験の成果の一部は、7月に台湾で開催されたアジアパシフィック視覚会議(APCV)で発表した。また、9月に開催された国際瞳孔学会の招待講演で発表した。国際瞳孔学会では多くの研究者から貴重な意見を得た。 さらに、メラノプシン細胞の知覚認知機能への寄与を調べるために、時間知覚への影響と空間パターン知覚への影響を検証した。研究は国立台湾大学との共同研究である。実験は終了し、現在成果を論文にまとめている。また、成果の一部は7月に開催されたアジアパシフィック視覚会議(APCV)で発表した(2件)。さらに8月には欧州視覚会議(ECVP)で発表した(1件)。また、メラノプシン細胞の認知機能を調べるために、Fraser-Wilcox錯視に対する影響を検証した。その成果を学会プロシーディングスとしてまとめ、10月に韓国で開催された国際色彩学会(AIC)で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も平成29年度と同様に瞳孔の対光反応の測定や、メラノプシン細胞の知覚認知機能への影響を検証する予定である。国立台湾大学、西スイス応用科学技術大学、ローザンヌ大学、マンチェスター大学等と共同して実験を進める予定である。西スイス応用科学技術大学、ローザンヌ大学とは医学応用を目的としたプロジェクトを計画している。マンチェスター大学とはメラノプシン細胞の基礎的な機能について研究を進める予定である。 瞳孔反応測定は他の心理物理測定実験と比較して多くの測定回数が必要であるので極めて多くの時間を要する。したがってこれらの実験のために昨年度実験補助員を雇用した。今年度は、勤務時間数を少し増やし、さらに実験を進める予定である。また、平成31年度に向けてマウス用平面型多原色人工照明装置の制作を予定している。制作に必要な経費は予算に計上している。
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