研究課題/領域番号 |
17H01809
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
内川 惠二 神奈川大学, 付置研究所, プロジェクト研究員 (00158776)
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研究分担者 |
吉澤 達也 神奈川大学, 人間科学部, 教授 (90267724)
増田 修 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (90775967)
永井 岳大 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (40549036)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 質感知覚 / 色覚 / 色彩工学 / 視覚心理物理学 |
研究実績の概要 |
本年度は、実物体を刺激として用いる実験の前段階として、色、光沢、テクスチャなどを制御してディスプレイ上に刺激を呈示するために、3D-CGを用いて実物体に近い刺激を作成する準備を行った。 刺激として、プラスチックや金属加工品など一般的な固体素材、および植物、食品や肌のような水分を含んだ生物特有な質感を持った素材を対象とした。刺激の質感知覚に関する最近の論文や学会発表を再度確認し議論したところ、質感を現実物体のように知覚させるためには、刺激を2次元画像としてディスプレイ上に呈示するだけでは不十分であることがわかった。3D-CGを用いて、刺激に色、光沢、テクスチャを付加するだけではなく、刺激に両眼視差を与え立体視させ立体形状として呈示すること、かつ刺激に動きを与え観測角度を変化させて呈示することが必要であることが判明した。そこで、本年度は、研究実施計画を変更して、刺激作成のためのPCプログラムを新たに開発することと刺激呈示の実験手続きプログラムの準備を行うこととした。 刺激呈示装置としては、高輝度有機ELディスプレイを準備し、刺激のHDR呈示を可能にした。刺激呈示用PCを準備し、刺激呈示、被験者応答の入力、実験全体の制御ができるようにした。被験者ブースを製作し、ブースの側面、背面、天井を黒の暗幕で覆って、ディスプレイによる刺激呈示の際に外部からの光を遮断できるようにした。さらに、実験装置スペースの削減のために、被験者の座る位置での光遮蔽は、可動式のブースを製作し、実験実施時のみに被験者を覆うように工夫した。被験者用アゴ台を準備し、デイスプレイ面から被験者の眼までの視距離が57cmになるように調整した。デイスプレイの光刺激のキャリブレーションのために、分光放射輝度計を使って光測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、交付申請書に記入した研究実施計画にある実験実施までには至らなかった。その理由は、第一に実験刺激の作成方法を大幅に見直したことにある。質感知覚研究は文字通り日進月歩で急速に進展している。そのため、我々は最近の学会発表や論文を参考にして、実験に用いる刺激を再度見直した。その結果、これまで考えていたような刺激呈示、つまりディスプレイ上に刺激を2次元の画像として呈示するだけでは現実感を持った質感知覚が不十分であることがわかった。刺激に両眼視差を与えて立体視できるようにすること、かつ刺激に動きを与えて観察角度を動的に変えることが重要な点であることが判明した。そこで、そのための刺激呈示プログラムを開発することを始めたが、その準備は進んでいるものの、実験実施までには至らなかった。 第二の理由は、研究代表者が本年度に所属機関を変更したため、実験装置を移動する必要があったことである。移動のために時間がかかり、その分研究の進捗が遅れた。 しかし、刺激の大幅な見直しによる実験結果の有効性が大きく増大し、実験装置や分光放射輝度計の準備はすでに終了しているので、(2)おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度は未完であった実験をまず行う。そのために刺激の作成プログラミングを完成する。その後、この実験結果を参考にして、実物体を刺激とした実験を行う。ディスプレイ実験と実物体実験の両方を今後行うことになり、実物体の準備のための時間が少なくなることが問題となるが、その対応策として、ディスプレイ実験と並行して、実物体の刺激の作製を行うことで時間を短縮する。 それ以外は、特に問題がないので、予定通り研究を進める。
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