研究課題/領域番号 |
17H01813
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
瀧ノ上 正浩 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (20511249)
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研究分担者 |
川野 竜司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90401702)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分子ロボット / 人工生命・人工細胞 / DNAナノテクノロジー / ソフトマター / マイクロ流体工学 |
研究実績の概要 |
DNAナノテクノロジー・マイクロ流体工学を駆使し,DNA設計に由来するプログラマブルな動的分子システムである「自己複製する非平衡動的なDNA人工細胞」の構築のため,DNAマイクロゲルおよびDNAマイクロカプセルの自己組織化と制御に関する研究を実施した.今年度は,外場や化学反応によるDNA人工細胞の制御を中心に行った. (1)外力場によるDNA人工細胞の変形・分裂のための物性計測として,DNA人工細胞膜の界面張力の定量化と,安定化のための新しいDNAナノ構造の設計と作製を行った.今までよりも小さい塩基配列で,従来のようなDNAナノ構造ができることを実証した.具体的には,従来のDNAオリガミの1/10のサイズのDNAオリガミを直方体的に自己組織化させ,そこに疎水性分子であるコレステロールを付加し,両親媒性DNAオリガミ構造を作った.収率に関してはまだ検討中であるが,電気泳動等の評価法により,実際に構築できていることを示した. (2)化学反応とのカップリングによるDNAからの情報の取り出し:DNAゲルによる人工細胞にRNAを転写できる塩基配列を組み込むことに成功し,RNAの転写の同定を行った.RNA転写の反応効率を向上させるため,問題となっている副反応の同定に成功した.これにより,配列設計や反応条件の検討により,効率よくRNA反応を行える可能性を示せた. (3)複製できるDNAゲル人工細胞の塩基配列の設計と構築:DNAポリメラーゼの反応を利用して,複数回複製ができるDNAゲルのための塩基配列の設計を行った.実際に,このDNAを化学合成(カスタム合成に依頼)し,DNAゲルができること,複製のためのDNAポリメラーゼ反応が機能することなどを実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように,申請時に予定していた研究を実施し,成果が得られたため.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,以下のような研究推進の方策をとる. (1)新規DNAナノ構造による変形・分裂を目指したDNA人工細胞の構築と制御 安定化を目的として実施した新規のDNAナノ構造の構築とDNA人工細胞の構築をさらに発展させ,安定でありながらも,外場や化学反応などを導入することで,変形や分裂などの動的な協働を示すシステムを実現することを目指す.まずは,DNAナノ構造の形状によって,界面張力の違いを出すことで,変形や分裂を示すシステムを構築し,様々な条件を変更することでその効率や制御の方法について検討する.次に,光などの外部刺激に応じて,光化学反応によって,DNAナノ構造を制御し,DNA人工細胞の制御も検討する.また,DNAゲルによって,変形・分裂,さらには複製ができるDNA人工細胞の構築も目指す. (2)RNA転写反応に基づいたDNAからの情報の取り出し DNAゲルによるものには,さらにRNAを転写できる塩基配列を組み込むことができるが,ゲル構造の安定性に問題があった.今までの研究で光硬化性の化学反応によって,安定な構造ができるようになってきたため,今後は,これにRNA転写ができる塩基配列を導入することで,化学反応(RNA転写反応)の溶液にDNA人工細胞を導入し,DNAの塩基配列情報に従って,RNAとしてその情報を読み出したり,その後の下流の化学反応を実現したりすることに挑戦する.
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