研究実績の概要 |
平成29年度の成果として、これまでに開発したグラフによる超分子モデル構築とGWAS(全ゲノム相関解析)データを組み合わせた解析を行い、成果を論文として公表した(Scientifc reports, 7, 8541, 2017)。この論文では、構築された4,500あまりの超分子複合体の構造モデル上に19,887個のヒト疾患関連変異をマッピングし、劣性遺伝変異はタンパク質内部に埋没するのに対し、優性変異はサブユニット間/ドメイン間のインターフェースに有意に多いことが示された。また優性型変異をdominant-negative(DN), haploinsufficiency(HI), gain-of-function(GF)に分類して比較したところ、DNは超分子構造の破壊、HIはDNA相互作用、GFはドメイン間相互作用にバイアスしていることが示された。すなわち、DNは構造破壊により機能を阻害、HIは転写制御レベルで機能を阻害、GFは機能的に重要なドメイン再配置を妨げることで阻害する傾向があることが示唆された。また、超分子複合体内の複数のサブユニットに同一GWASデータがマップされるモデルを探索したところ、1,226個の統計的に優位な疾患関連モデルが選抜された。特に同一超分子複合体に複数のGWASがマップされている場合には、複合疾患に関与したり、逆にある疾患に罹患した場合に他の疾患にかかりにくいなどの事例が認められた。さらに、疾患変異がマップされる複数のサブユニットと相互作用していながら、自身には疾患関連変異も疾患に関連したアノテーションも付与されていないサブユニットが多く存在することが示されたことから、未発見の疾患関連遺伝子の予測に応用可能と予想される。よって平成29年度の成果から、これらの超分子モデルが新規の疾患関連遺伝子や創薬ターゲットの探索に利用できることが示唆された。
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