研究課題/領域番号 |
17H01818
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
白井 剛 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (00262890)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生命分子計算 / 生体超分子構造 / ゲノムワイド相関解析 / 分子間相互作用 |
研究実績の概要 |
令和元年度の成果として、ターゲット遺伝子-疾患-ドラッググラフにデータを追加し、ドラッグターゲット遺伝子発現データをHuman Protein Atlasを参照して付け加えた。また、以前開発した超分子モデリング手法(Sci. Rep. 5, 16341 (2015))を改良し、モデリング過程の自動化率を向上させた。このように改良したターゲット遺伝子-疾患-ドラッググラフ上で疾患-ドラッグの最短パスを解析することで、ドラッグターゲットタンパク質と疾患関連タンパク質の間に、ターゲットでも疾患関連(原因)でもないタンパク質が1分子介在するパターンが最も頻繁に認められることがわかった。この最頻出グラフパターンを解析したところ、疾患関連タンパク質は核局在し、ドラッグターゲットタンパク質は細胞膜局在する傾向が示された。これらの間を仲介するタンパク質は小胞体(ER)またはメラノソームに局在する傾向にあり、細胞膜から細胞核までドラッグの効果を伝達する役割を果たしていることが推定された。これらを解析することで、効率的なターゲット探索法の開発につなげられることが期待される。さらに興味深い点として、「疾患関連遺伝子(タンパク質)が既知であり、承認薬が存在しターゲットも既知であるが、疾患関連遺伝子とターゲットの分子間相互作用は自明ではない」パターンが3%程度存在した。これらの疾患関連タンパク質とドラッグターゲットの間には現在、自明な相互作用エッジが特定されていないことになるが、それらの相互作用を特定することで、新規の分子間相互作用の解明につながると期待される(論文作成中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度計画をほぼ達成した。ただし成果の論文報告が年度内に行えなかったので、現在は論文作成を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の結果を受けて、最終年度は以下の研究を行う。(1)グラフを利用した新規ドラッグターゲットや疾患関連(原因)タンパク質予測手法を開発する。これは主に機械学習(ランダムフォレスト)の適用によって実施する。(2)改良した超分子モデリング手法を用いて疾患関連超分子の半自動網羅的モデリングを行う。このモデリングには遺伝子発現データを参照し、組織・疾患特異的な疾患関連超分子の発見を目指す。(3)現在のターゲット遺伝子-疾患-ドラッググラフには、ウイルス・細菌などの病原体タンパク質をターゲットする医薬品(ドラッグ)も含まれているが、病原体タンパク質自体の情報(ノード)およびそれらとヒトタンパク質の相互作用は含まれていない。現在世界的な課題であるCOVID-19などの感染症にもこのグラフ解析を応用するために、病原体タンパク質のデータによるグラフの改良を目指す。これらの研究から得られた結果を取りまとめて学会発表や論文報告を行う。
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