研究課題/領域番号 |
17H01820
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
細川 千絵 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (60435766)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ニューロフォトニクス / ナノバイオ / 神経細胞 / 光ピンセット / レーザー |
研究実績の概要 |
本研究では、集光レーザービームの局所力学摂動により神経細胞に局在するタンパク質分子を能動的に操作し、摂動に伴い過渡的に応答する細胞内分子秩序形成、さらには分子秩序化により誘発される神経活動の時空間ダイナミクスを明らかにする。レーザー誘起細胞内分子秩序化により、神経細胞シナプス結合部位の分子動態の集合操作や細胞内イオン濃度を操作する技術を開発することにより、神経細胞ネットワークにおける神経活動ダイナミクスの制御を実証する。 本年度は、細胞摂動用レーザー光源であるフェムト秒レーザーを任意の位置で照射可能とするため、現有の顕微鏡システムに空間光位相変調器を導入し、顕微蛍光解析システムを改良した。ラット海馬由来培養神経細胞のシナプス部位に局在するAMPA型グルタミン酸受容体分子を対象とし、光ピンセット用近赤外レーザー照射により量子ドットで標識したAMPA受容体の分子運動が遅くなることを示し、レーザー照射に伴う分子秩序化の可能性が示唆された。光ピンセット用波長1064 nmのレーザーに加えて、捕捉対象分子に吸収のある弱いレーザー光を同時に照射することにより、細胞表面分子を高効率に捕捉する手法の検討も開始した。さらに、細胞摂動用の集光フェムト秒レーザー照射に伴う神経細胞の光刺激過程の蛍光解析のため、フェムト秒レーザーの短時間照射に伴い外液である蛍光色素溶液が細胞内に流入する過程を解析し、レーザー照射後において細胞膜の修復を示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画に基づいて研究が遂行され、細胞摂動用レーザー光源を組み込んだ顕微蛍光解析システムを改良した。蛍光分子や対象分子の最適化を行い、集光レーザー摂動に伴う神経細胞の分子秩序化過程の蛍光解析により、細胞表面分子の分子動態が遅くなる知見を得た。以上の成果から、本年度は研究計画に沿って順調に研究が進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見を基にして、レーザー誘起細胞内分子秩序化過程の顕微蛍光解析を引き続き行う。神経シナプス部位において蛍光標識した受容体分子や小胞等を対象として、レーザー集光領域における分子集合ダイナミクスの解析を進める。また、顕微蛍光測定に加えて電気生理計測を行うことにより、レーザー誘起細胞内分子秩序化に伴う単一神経細胞の神経活動変化についての検証を開始する。さらに、細胞摂動用レーザーを任意の位置に集光し、特定の細胞を刺激して得られる神経細胞ネットワークの活動特性を明らかにする。
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