研究課題/領域番号 |
17H01825
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 豊 京都大学, 情報学研究科, 名誉教授 (00135526)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 待ち行列 / 数理モデル化 / 解析評価 / ネットワーク / 情報システム |
研究実績の概要 |
フォグネットワーキング環境においては,各種センサー,メータなどから収集したデータを中央サーバに集約して処理をするのではなく,ネットワークエッジで一次処理を行い,その内容圧縮されたデータだけを中央サーバで高次処理をすることが可能になる,スマートグリッドを例にとり,AMIの構成要素であるメータが相互の協調でネットワークエッジまで計測情報を送信する数理モデルを開発し,その性能解析を行った。さらに省電力を考慮し,メータが非稼働時には電源をOFFにする場合に対応するモデルも開発し,その検討を行った。 大規模計算が必要なタスクを大量のクラスターマシンを使用して処理を行う並列分散システムにおいては,一部のマシンの障害あるいは処理速度の低下が全体性能に及ぼす影響が大きい。これを緩和するために各マシンの処理過程にチェックポイントを設けて,処理遅滞の有無を調べ,発見時には代替マシンが処理を引き継ぐ方策を考察した。定量的評価を行うために数理モデルを開発し,その性能解析を行い,全処理時間を最小化するチェックポイントの回数に関して検討を行った。 フォグコンピューティングにおいてはネットワークエッジに近く位置するマシンで処理を行う。これらのマシンにおいては局所的に存在するタスクを処理するため,負荷が低く,かつネットワークトラヒックも低減される。その結果,実時間制約の厳しいアプリケーションを収容可能であるが,低遅延性のより精密な評価が必要になる。このため,汎用性のあるGI/G/1型待ち行列を基に数理モデルを開発し,その定常分布の漸近特性を解析し,漸近公式を導出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題に関連する自身の研究成果および他研究者の関連研究成果を取り纏めた英文編著書をSpringer社から出版した。その他査読付き英文学術論文誌に論文が掲載され,査読付き国際会議においても論文発表を行った。さらには同研究トピックスに関する国際会議を筑波市および中国秦皇島市で開催し,国際プログラム委員長を務めた。加えて欧米において開催されたネットワーキングに関する国際会議で5回国際プログラム委員を委嘱された。
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今後の研究の推進方策 |
1.フォグネットワーキング環境においてはバッテリー駆動における省電力化あるいはエネルギー消費の抑制のため、サーバーが非稼働時には節電モードあるいは休眠モードで待機させる場合も想定される。このような場合に節電モードおよび休眠モードの採用がシステム性能に及ぼす影響評価を行う必要があり、数理モデルを開発し、その性能評価手法を考察する。 2.フォグコンピューティングとクラウドコンピューティングの融合モデルを検討する。応答性能を良くするにはネットワークエッジに位置するサーバ使用が適しているが、要求頻度の増大あるいは計算負荷の増大の結果、当該サーバの稼働率が増大すると、他のサーバへ負荷分散を行う必要が出てくる。この場合に他のエッジサーバに分散するか、あるいはエッジよりは中心に位置するサーバに分散するか、さらにはこれらを組合わせるか、を検討する必要がある。このための数理モデルを開発し、最適な負荷分散法を考察する。
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