研究課題/領域番号 |
17H01826
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
風間 一洋 和歌山大学, システム工学部, 教授 (60647204)
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研究分担者 |
池田 哲夫 静岡県立大学, 経営情報学部, 教授 (60363727)
斉藤 和巳 神奈川大学, 理学部, 教授 (80379544)
伏見 卓恭 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 助教 (80755702)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 空間ネットワーク分析 / 機能コミュニティ / 集合中心性 / 高速化 / ユーザ行動モデル |
研究実績の概要 |
今年度は,主に以下の研究を行った. 1) 今まで取りかかってきた,想定されるリンク切断の組み合わせは膨大なので,全てを孤立ノードとした初期状態から1本ずつリンクを追加した際の差分値だけを計算することで,(申請時には「頑健集合中心性」と呼称していた)グループ連結中心性を効率的に計算する手法に関する成果とその評価を,まとめてIPSJ TOMに投稿して採録された. 2) グループ連結中心性の応用として,空間ネットワークの頑健なクラスタリング手法を考案した.実際にOpenStreetMapから抽出した道路データに適用することで,さまざまな場所がある機能によって結合してまとまりとして捉えられる機能地域(Functional Region)を抽出することを試みて,中心性が持つ頑健性により災害時の避難地推定に適用できることを示した.これはCNA2018で発表し,その後さらに発展した内容がAPNSに採録された. 3) 多様体データに対しても,オブジェクト間の距離からk-NNグラフを構築してグループ連結中心性で頑健にクラスタリングする手法を考案し,MPS 120で発表した. 4) 投稿論文の査読時に,ノードやエッジ,属性の存在確率を考慮する新しいグラフ分析分野である"uncertain graph"との基本的なアプローチ部分の類似性が指摘されたことをきっかけに関連研究を調査し,我々のアイデアをuncertain graphの枠組で定式化しなおした.これにより,我々が本研究計画で考案したアイデアを,グループ連結中心性だけに限定せずに,一般的なネットワーク分析の手法のUncertain Graph対応に適用できるようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在は,(申請時には「頑健集合中心性」と呼称していた)グループ連結中心性を中心に研究を行うと共に,そこで得られた副次的な研究アイデアをUncertain Graph分野でさらに発展させることに力を注いでいる.ただし,その分,研究提案時のもう一つの柱であった機能コミュニティ法の研究に関しては,停滞している.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,以下の研究をおこなう予定である.. 1) グループ連結中心性に関しては,昨年度はUncertain graphとしてのエッジの連結確率を一定としていた.しかし,実応用を考慮すると ,空間ネットワーク上の場所によって異なる方が自然である.そこで,連結確率を公開されているような災害情報データに応じて連結確率を設定できるように,提案手法を改良することを考える. さらに,グループ連結中心性の空間ネットワーク以外のネットワーク構造における応用として,共著ネットワークのようなノード間に複数のエッジを持つ多重グラフに適用できるように改良し,有用性を検証する. 2) グループ連結中心性考案および高速化時の知見に基づいて,Uncertain Graphにおける高速・厳密なPageRank計算方法(SIGIR 2017で発表された既存研究では,ごく一部のエッジだけを対象に近似手法で求めている)や,ネットワークモチーフを高速に求める方法を考案する. 3) 機能コミュニティに関しては,機能コミュニティ抽出法を空間ネットワークに適用した最初の研究では,複数の都市に対して個別に抽出した結果を比較したために,異なる都市の機能コミュニティの対応が必ずしも明確ではない問題が存在した.今年度は,以前の異なる都市データに転移学習を用いることで抽出結果の解釈の統一性と実行性能の問題を改善する手法を,さらに教師あり学習を適用できるように改良することで,公開されている都市計画データや災害情報データとの照合を可能にすることを試みる.
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