2022年度は、最終年度ということで、SNS上のニュースの信頼性について論文をまとめ、ICA(International Commnication Association)にて発表した。ICAに採択されたペーパーは、New Media & Societyという国際ジャーナルにも投稿し、採択された。 同論文では、信頼性に関する従来の焦点が主に情報のコンテンツに合わせたものだったのに対して、ニュースを伝達するメディアの物質的なアフォーダンスやメディア媒体そのものの信頼性評価を考慮することの重要性を強調した。これによって、メディアの制度的信頼ならびに個人的な信頼という両面に対処することができるのである。 今回の論文では、これまで行ったインタビュー調査の中から、アルゼンチン、フィンランド、イスラエル、日本、アメリカのメディアユーザー488人のデータを使用。この詳細なインタビューに基づいて、メディアにおける選択可能性、双方向性、カスタマイズ可能性、検索可能性、情報の豊富さ、速報性という6つの指標を抽出し、これらの要素が、国を超えてニュースの信頼性の評価に影響することを明らかにしている。その際、とくに5カ国の社会的技術的な共通項を明らかにし、信頼性とユーザーの主体性の相互作用を示すことができた。こうして国を超えて表れるニュースの信頼性を、生活行動、生活様式という実際の経験から明らかにし、「メディアの信頼性」概念の幅を広げる研究となった。この論文を国際学会ICAで発表後、米国ノースウェスタン大学においてワークショップを行い、デジタル化情報社会とジャーナリズムについて、共同研究者たちと総括的な懇談を行った。以上、最終年度は、デジタル情報機器の普及状況におけるメディアの信頼性を包括的に議論することができたと考えている。
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