近年,複数人による議論の分析は,企業での会議だけではなく,PBLに代表される教育の現場でも重要になりつつある.しかしながら,円滑で満足のいく議論・意思決定をおこなうには,適切な議事進行をおこなえるファシリテーター(司会者)の存在が不可欠である.議論中の実際の対話の流れから適切なファシリテーション技術のルール化をおこない,それを機械化したデジタルファシリテーターの実現を目指す.2020年度は,機能の追加,コーパスの拡充とそのコーパスの分析結果を行った. 昨年度までに実施したファシリテーターの分析は言語的な特徴のみに着目していた.この研究を拡張し,当初の目的であるマルチモーダル化を進め,その有効性を検証した.具体的には議論参加者の顔特徴,身体特徴,音声特徴を言語的な特徴量と統合し,マルチモーダル化が有効であることを実験的に示した. 昨年度までに研究したファシリテーターの振る舞いは,会議・議論全体を俯瞰した場合の特徴の分析であった.これはファシリテーターのひな形としては機能するが,実際にシステム運用する場合はどのようなタイミングでファシリテーションを行うかが重要である.そこで,既存の会議コーパスを対象とし,どのようなタイミングでファシリテーションを行う発話をするべきかを予測する技術について研究をした. また,既存のコーパスとは種類の違うコーパスの構築を進めた.具体的には,2対2のディベート環境を想定し,いくつかのトピックについて議論するコーパスを収録した.そのコーパスについて人手で傾向などを分析した.
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