現実世界の大規模な探索問題は全解探索は困難であり、一部を選択的に探索するアルゴリズムが用いられる。ゲーム木の探索はこのような問題の一例であり、モンテカルロ木探索が有効とされているが、将棋など「細い正解の一本道をたどらねばならない」ような問題領域においては収束が遅く、適用が難しい。我々は、乱数を組み込んだ探索を利用するアルゴリズムを提案し、将棋での有効性を確認したが、単一の評価関数を用いることによる効率の悪さも明らかになった。本研究では、(1)性質の異なる複数の評価手法を活用できるモンテカルロ木探索手法を検討し、(2)将棋を題材に実用的なアプリケーションとして実装を行い、(3)大規模分散計算環境でその有効性を評価する、ことを目指す。 本年度は、これまでに得られた成果をもとに並列探索アルゴリズムの本格実装を行い、大規模な実行環境での性能の評価と改善を行った。 また、提案手法の応用範囲を拡大するため、街路での人の動きをシミュレーションするアプリケーションを構築し、大量の人が移動するとき、混雑を減らしてソーシャルディスタンスを保つような人流制御が可能であるかを検討するような問題を検討した。また、様々な種類の制約を持つ問題への適用を探るため、カードゲームの最中限、有名なボードゲームのカラハや、ルール記述言語によって与えられる一般的なゲームを対象とするGeneral Game Playingに対する研究を行った。これらの研究成果は、提案手法の実社会問題への応用性を高めるために活用できると考えている。
|