研究課題
1. アルゴリズムの開発。本年度は、植物プランクトンの吸収係数をベースにしたAbPMモデルによる水域の一次生産量の推定に着目した。AbPMモデルを実行するためのキーポイントは、生物光学モデルを用いてリモートセンシングデータから水塊の総吸収係数を高精度で推定することである。しかし、全ての既存の手法は、対象水域の光学特性に基づいた仮定が含まれているため、手法の適用範囲は手法の開発に使用された水域に限られている、という問題点があった。そこで、本研究の目的は、この問題点を解決することとした。このため、(1)リモートセンシングデータによる全ての水域を4つのタイプ(低濁度、中濁度、高濁度、極めて高濁度)に分類する手法を提案した。(2)水域のタイプによって最も適切な推定モデルを選定した。その結果、様々な水域において、水塊の総吸収係数を高精度で推定することが可能になった。しかし、総吸収係数から植物プランクトンの吸収係数の分離は依然課題として残されている。2.現地データの収集。今年度は、新型コロナウイルスの影響が収束しなかったため、計画した国内外の現地調査は予定通りで実施できなかったが、既存文献の調査および共同研究によって、必要なデータを収集した。3.衛星データの収集と前処理。前年度に引き続き、面積100㎞2以上の湖沼の衛星データ(MERISや、MODIS、OLCIデータなど)を収集し、水域の抽出、雲・雲の影の検出などの前処理を行った。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、新型コロナウイルスの影響が収束しなかったため、計画した海外湖沼の調査はまた予定通りで実施できなかったが、茨城県内にある霞ヶ浦の現地調査や、国内外既存データの収集、衛星画像の処理等を予定通り以上で行った。また、湖水の一次生産量を推定するためアルゴリズムの開発も順調に進み、一部の結果は既に国際誌に掲載され、国内外の学会においてもオンライン発表を行った。
前年度に引き続き、実施可能な国内(或は県内)の現地調査以外に、共同研究という形で、様々な湖沼の基礎データを収集する。また、衛星画像の収集と前処理も継続する。さらに、今まで蓄積してきた衛星画像と開発・改良されてきている一次生産量の推定アルゴリズムを用いて、全球水域の一次生産量を推定し、アルゴリズム有効性の評価を行う。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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