研究課題/領域番号 |
17H01852
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
橋濱 史典 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (80535807)
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研究分担者 |
神田 穣太 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60202032)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海洋科学 / 環境分析 / 尿素 / 亜熱帯海域 |
研究実績の概要 |
亜熱帯海域の炭素循環研究における最大の課題は、光合成による冬から夏にかけての正味の二酸化炭素吸収 (純群集生産) を駆動する窒素の供給・同化過程が未確認で、二酸化炭素吸収の変動の仕組みが解明されていないことである。本研究は、これまで研究例の少ない尿素に着目し、高感度吸光光度分析技術を駆使して亜熱帯海域における尿素のダイナミクスを観測することにより、尿素が純群集生産を支える窒素源であるか否かを検証するものである。 平成30年度は尿素の全自動高感度吸光光度分析システムを用いて、北太平洋亜熱帯域を東西に広くカバーするトランゼクトにおいて尿素の空間分布を明らかにした。大部分の測点において尿素濃度は混合層内で顕著に高く、深くなるにつれて低下する鉛直プロファイルを示した。亜熱帯海域における主要な一次生産者であるProchlorococcusのウレアーゼ遺伝子(ureC)を解析したところ、混合層内においてureC発現量が顕著に高かった。ureC発現量は、尿素濃度、尿素/アンモニウム塩濃度比、溶存有機態窒素に占める尿素の割合と有意な正の相関を示した。Prochlorococcusの尿素利用能は、高尿素環境下や、アンモニウム塩および尿素以外の溶存有機態窒素が相対的に低濃度の環境下において高まることが明らかとなった。 また、気象庁観測船による西部北太平洋亜熱帯域、海洋研究開発機構学術研究船白鳳丸による東部インド洋の航海に参加し、尿素動態に関する観測および試料採取を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は尿素の全自動高感度吸光光度分析システムを用いて亜熱帯海域における尿素の濃度分布を把握することが主目的であった。現場観測で得られた試料を分析することにより、北太平洋亜熱帯域における尿素の空間分布を明らかにすることができた。また、尿素の鉛直プロファイルに関連したProchlorococcusのウレアーゼ遺伝子発現も明らかにすることができ、尿素利用の一端を捉えることに成功した。西部北太平洋亜熱帯域および東部インド洋において尿素動態に関する観測および試料採取も実施できたことから、当初の計画通り、本研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29-30年度に気象庁観測船および海洋研究開発機構学術研究船白鳳丸の航海で北太平洋亜熱帯域および東部インド洋において採取した試料を分析し、尿素濃度の時空間分布を明らかにする。白鳳丸による東部インド洋の航海では、尿素取り込み速度および尿素代謝遺伝子に関する試料も採取しており、それらの分析およびデータ解析を行う。平成31年度には気象庁観測船による西部北太平洋亜熱帯域、白鳳丸による東部南太平洋亜熱帯域の航海が予定されており、これらの航海においても尿素動態に関する観測および試料採取を実施する。平成32年度以降も観測航海、試料採取および分析、データ解析を実施し、尿素が亜熱帯海域の純群集生産を支える窒素源であるか否かを明らかにする。
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