研究課題/領域番号 |
17H01853
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
堀川 恵司 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (40467858)
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研究分担者 |
酒徳 昭宏 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 講師 (20713142)
酒井 英男 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (30134993)
関 宰 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (30374648)
村山 雅史 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 教授 (50261350)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アラスカ湾 / 山岳氷河融解 / 生物生産 / 環境DNA |
研究実績の概要 |
1.研究初年度のH29年7月に研究航海を実施し,アラスカ湾の水深約700mの地点で8.5mのピストンコア試料を採取した。このピストンコア試料のほかにも,3地点でピストンコア試料を,約20地点で表層堆積物試料を採取した。また,バリウム濃度・バリウム同位体測定用の海水試料,環境DNA分析用の海水試料なども研究航海中に採取した。 2.初年度は,水深700mで採取したピストンコア試料について,集中的に分析を行った。14C年代測定を5層準で実施し,試料が最終氷期まで達していることを確認した。また,高知コアセンターのXRFコアスキャナーを使い,元素分析を行った。さらに,富山大学でTOC,TCなどの元素分析を行い,XRFのBrカウント値とTOCデータの比較から,XRFのBrカウントデータが生物生産の良い指標になる事を確認した。 3.また,XRFのFe/Ca比とTi/Ca比データから,融氷期初期に2回の陸源砕屑物供給量増大期があることが分かった。この2度の陸源砕屑物の供給量増大イベントは,氷期に北米大陸に存在していたコルディレラ氷床が,2回大規模融解したことに対応すると考えられる。 4.さらに,環境DNA分析については,過去1.6万年間の試料について,8つの層準で行ったが,増幅できた魚類DNAは1種もしくは2種と極端に少なかった。そのため,DNAの抽出方法を変えるなどの工夫をし,H30年度以降,あらためて過去の魚類DNAの検出を試みることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究初年度に,研究に必要な堆積物試料・海水試料が採取でき,最も重要なピストンコア試料の年代測定,コアスキャナーによる高時間解像度の元素分析を終えることができた。さらに,生物生産の指標となるTOC,TC,CaCO3含有量なども100層準について分析を終えた。また,環境DNA分析も実施し,次年度以降,DNAの抽出に工夫が必要であることも見極められた。 以上のことから,研究は順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
XRFのFe/Ca比とTi/Ca比データから,融氷期初期に2回の陸源砕屑物供給量増大期があることが分かった。この2度の陸源砕屑物の供給量増大イベントは,氷期に北米大陸に存在していたコルディレラ氷床の大規模融解が2度あったことに対応すると考えられるため,H30年度はこの区間を対象にして,微量元素分析・同位体分析を行い,氷床融解場所の特定を行う。 また,4不飽和アルケノン分析からこの時期の表層塩分変動の定性的な変動を復元する。
さらに,初年度,過去1.6万年間の試料について,8つの層準で環境DNA分析を行ったが,増幅できた魚類DNAは1種もしくは2種と極端に少なかった。本申請研究において,山岳氷河融解時期に魚類相の変化があったかなかったかについて,定量的な情報から示すことが重要な課題として位置づけているため,H30年度以降,DNAの抽出方法を変えるなどの工夫をし,再度過去の魚類DNAの検出を試みる。
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