研究課題
鉄は海洋の生態系をコントロールする重要な要因の1つであるが、海洋一次生産者である植物プランクトンが摂取している鉄の起源や化学形態に関する知見は少なく、そのため大陸などからの鉄の供給と生物生産の関係を定量的に評価することが困難である。本研究の目的は、(1) 鉄(Fe)とネオジム(Nd)の同位体を併用し、植物プランクトンが摂取する鉄の起源・形態を特定すること、(2) 北太平洋亜寒帯域などに供給される鉄の起源・量の年変化・季節変化を同位体データおよび化学データから推定し、これらの海域の生物生産と陸域からの鉄供給との関係を定量的に評価すること、である。初年度は分析技術の確立に重点を置き研究を進めた。具体的には、(i)逐次溶解法による沈降粒子試料からの各種構成成分の分離・抽出条件の最適化と、(ii)極微量ネオジムの同位体比測定法の確立を行った。2年目は、これらの分析法を実試料に適用した。具体的には、北太平洋亜寒帯域の沈降粒子に逐次溶解法を適用し、各成分の主成分、微量成分の定量分析、Sr、Ndの同位体分析を進めた。その結果、沈降過程での珪酸塩砕屑粒子の組成変化を新たに確認することができた。3年目は、沈降粒子の年変化・季節変化の分析に本格的に取り組み、最終年度の4年目には、詳細な季節変化のデータを取得した。これらの結果から、同位体組成および化学組成の季節変化の主要因を特定するとともに、周辺陸域から北太平洋亜寒帯域への鉄を含む物質の供給量の定量的評価を行った。具体的には、北太平洋亜寒帯域に供給される鉄は、一年を通して火山性物質の寄与が比較的大きいものの、春秋にはアジア大陸からの風成塵の寄与が大きいことが示された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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