昨年度に引き続き、環境省モニタリング1000サイトから新たな森林サイトを選び、土壌採集を行った。土壌採集を行った森林サイトは、大佐渡スギ林およびヒバ林、長野県志賀高原地域おたの申す平(オオシラビソ林)およびカヤノ平(ブナ林)、和歌山県京大演習林(モミ林)、高知県佐田山試験地(常緑広葉樹林)および市ノ又試験地(常緑広葉樹林)である。これらのサイトは、火山灰の加入量において大きな変異がある。各サイトにおいて、等高線に平行に斜面上部から下部にかけて一定間隔で4本のトランセクトを置き、各トランセクトに沿って深さ30cmの土壌コアを5個採集し、トランセクト毎に混ぜて混合試料とした。各土壌コアは混合する前に、3段階の深さ(0-5cm、5-15cm、15-30cm)に分離した。土壌試料は冷蔵して京大に持ち帰り、直ぐにBaCl2溶液を用いて、無機態窒素と交換体陽イオンの抽出を行った。また、一部の新鮮土壌を20℃で10日間培養し、土壌窒素純無機化速度を求めた。土壌リンについては、連続抽出法によりリン画分ごとに濃度を決定した。フェノール性物質濃度については、50%メタノール溶液抽出により決定した。さらに、選択溶解法により非晶質鉱物に含まれているAlとFeを可溶化し、それらの濃度を決定し火山灰影響の指標とした。本年度は最終年度なので、これまでに蓄積したデータを用い、土壌窒素純無機化速度を火山灰加入がどのように支配しているのかを解析した。解析にはパス解析 (PLS-PM解析)を用い、目的変数を土壌窒素純無機化速度とし、独立変数を火山灰指標、土壌理化学性、針葉樹率とした。本解析により、火山灰加入は日本列島の自然林生態系において、陽イオン濃度や全P濃度を介して土壌窒素純無機化速度に対して正の間接的影響を与えていることが明らかとなった。
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