研究課題/領域番号 |
17H01860
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
吉江 直樹 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 講師 (50374640)
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研究分担者 |
郭 新宇 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (10322273)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 栄養塩動態 / 海洋低次生態系 / 超高解像度観測 / 生態系モデル |
研究実績の概要 |
伊予灘潮汐フロント域における超高解像度観測の実施:伊予灘佐田岬周辺の潮汐フロント域において、海洋表層の成層強度が異なる初夏と盛夏に、大潮・小潮の潮汐強度変化による影響を除去するために2週間にわたる現場観測を2回実施した。具体的には、全長約40kmの観測ラインを約0.9から1.5km間隔で高応答性センサー(硝酸計、浅海用乱流計、多項目センサー群[水温、塩分、濁度、光合成有効放射(PAR)、溶存酸素(DO)濃度、植物色素(Chl.a)濃度]、船底超音波多層流向流速計)を用いて観測した。また、センサーの校正のために、随時海水を採取して持ち帰り実験室にてChl.a濃度および硝酸塩濃度を高精度に分析した。さらに、低次生態系の群集構造把握のために、海水をサイズ分画濾過し植物のサイズ組成を分析した。 瀬戸内海における超高解像度数値モデルの開発:本研究の数値モデルは、物理モデルと生態系モデルから構成されるが、今年度は、POM(Princeton Ocean Model)を瀬戸内海および九州・四国南岸に適応したモデルを元に、ネスティング手法により伊予灘の潮汐フロント域を超高解像度化したモデルの開発に着手した。 佐田岬における高頻度時系列観測の実施:三崎漁協と共同で佐田岬に時系列モニタリングステーションを設け、水温・塩分・Chl.a濃度・濁度を20分間隔で、栄養塩濃度を1日間隔で観測した。また、約1月半毎に現地に赴き、センサー類(水温・塩分計、Chl.a・濁度計)の保守作業(データ回収・電池交換・生物付着の除去・再設置)を実施した。また、三崎漁協の西濱らにより毎日採水・濾過処理・冷凍保存された栄養塩分析用海水サンプルを、実験室にて栄養塩自動分析機を用いて高精度に分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高機動観測船と高応答性センサー群を用いたこれまでに類を見ない超高解像度の現場観測は、技術的な面でハードルが高かったが、初年度にかなりの部分を成功させることができたため。また、佐田岬における高頻度時系列観測についても、センサー類のメンテナンスを高頻度に実施することにより、生物付着によるデータクオリティの低下を最小限に抑えることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、伊予灘潮汐フロント域においては、昨年度に実施した東西方向の超高解像度観測を発展させ、南北方向にジグザグな観測ラインを設けることにより、潮汐フロントの詳細な3次元分布を捉えることを目指す。また、初年度に開発に着手した超高解像度海洋物理モデルに生態系モデルを結合し、観測で得られた混合・栄養塩供給過程に関する知見と生態系データをモデルに導入し、現実に即した形で物理場・生態系構造・栄養塩循環を再現することをめざす。佐田岬ステーションにおいては、継続して高頻度時系列定点観測を実施する。潮汐フロント域での超高解像度観測の合間における時間変化の補完、突発的な気象擾乱などによる特異な変動イベントについてのデータ解析、水温・塩分センサーおよびChl.a・濁度センサーの保守と栄養塩分析を行う。
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