研究課題/領域番号 |
17H01860
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
吉江 直樹 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 講師 (50374640)
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研究分担者 |
郭 新宇 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (10322273)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高解像度観測 / 衛星表層水温 / 沿岸 / 栄養塩 / 物質循環 / 生態系モデル |
研究実績の概要 |
潮汐フロント域における超高解像度観測:伊予灘の佐田岬半島先端部周辺の潮汐フロントを横断する3本の東西ラインにおいて超高解像度(約1km)の多項目観測を実施した。その結果、豊予海峡中央部よりも遥かに強い乱流混合が生じているホットスポットを発見した。そこでは、海底地形が極めて急峻な渓谷構造をとり、潮流がその海底渓谷にぶつかる際に乱流混合が発生してる可能性が高かった。また、このホットスポットにおいては新たに高頻度の時系列観測を実施し、潮流の変化に伴う極めて大きな乱流混合の時間変化とそれに伴う低次生態系の応答を捉えることに成功した。 衛星表層水温を用いた潮汐フロントの水平分布解析:伊予灘および豊後水道の佐田岬半島先端部周辺において、静止軌道衛星ひまわり8号による高頻度・高解像度(毎時、水平解像度2km)の表面水温データを用いて、表層水温の水平勾配から潮汐フロントを抽出し、潮流の変化に伴う潮汐フロントの水平分布の変化について解析した。その結果、伊予灘と比較して豊後水道における潮汐フロントが明瞭であること、潮流の変化に応じて潮汐フロントが水平的に移動すること、混合域が成層域に進入する際に潮汐フロントが強化され、その逆の成層域が混合域へ進入する際には潮汐フロントが弱まることなどが明らかとなった。 佐田岬における高頻度時系列定点観測:佐田岬半島に先端部において高頻度時系列定点観測を実施する。潮汐フロント域での超高解像度観測の合間における時間変化の補完、突発的な気象擾乱などによる特異な変動イベントについてのデータ解析、水温・塩分センサーおよびChl.a・濁度センサーの保守と栄養塩分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高解像度の現場観測は予定通り進行しており、極めて急峻な海底渓谷と早い潮流により極めて大きな乱流混合が生じているホットスポットを発見することができた。モデル開発は若干遅れ気味ではあるが、佐田岬周辺の潮汐フロントを包括した高解像度の数値モデルは完成に近づいている。当初は予定していなかった衛星表層水温を用いた潮汐フロントの水平分布解析を新たに実施し、船舶観測では得られない長期間にわたる高頻度・広域の潮汐フロント動態について明らかにすることができた。年度末には、中国および日本国内でのCOVID-19の感染拡大により、外務省の渡航制限より中国での研究打ち合わせをすることができなくなり、国内での研究集会への参加ができないことが判明した。研究遂行上、中国での打ち合わせと国内での研究集会への参加が不可欠なため、COVID-19の終息時期までそれらを延長して実施することにした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの観測結果をまとめ、佐田岬周辺の潮汐フロントを包括した高解像度の数値モデルの開発を継続し、衛星水温の解析から明らかになった豊後水道北部の潮汐フロントについて新たに超高解像度の船舶観測を実施する。また、COVID-19の感染拡大で実施できなかった部分については、感染状況に応じて実施する。
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