研究課題/領域番号 |
17H01862
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
竹川 暢之 首都大学東京, 理学研究科, 教授 (00324369)
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研究分担者 |
三澤 健太郎 首都大学東京, 理学研究科, 助教 (10431991)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 環境分析 / エアロゾル / 質量分析計 / 熱脱離 / イオン化過程 |
研究実績の概要 |
前年度に構築した評価実験系を用いて、エアロゾル粒子の熱脱離・イオン化に関する実験を行った。テスト粒子として塩化アンモニウム (NH4Cl) およびヨウ化アンモニウム (NH4I) を使用し、捕集・熱脱離部分とイオン源の相対位置を変化させてイオン信号の測定を行った。これらの粒子はアンモニア (NH3) とハロゲン化水素 (HX:HClまたはHI) に分解する。いずれの場合でも、NH3はHXに比べて大きな広がり角度で拡散することが明らかになった。広がり角度の差は、NH3とHClの対よりNH3とHIの対の方が顕著であった。この挙動は単純な自由分子運動では説明できないことから、分子同士の衝突が重要である可能性が示唆された。これら一連の成果について、国際学会で発表するとともに、学術誌論文として発表した。上記実験と並行して、高時間分解能の質量分析計を用いたイオン信号の高速測定も行った。今後、チョッパー等と組み合わせることで、分子運動速度の直接測定が可能になると期待される。 上記の実験結果を解釈するために、直接シミュレーション・モンテカルロ法に基づく分子衝突モデルを構築した。モデルでは、熱脱離点においてマクスウェル・ボルツマン速度分布に基づき気体分子に初速度を与える。熱脱離点の近傍にセルを設けて、確率的な手法によって分子衝突の判定を行う。セルの大きさは分子の平均自由行程と同程度に設定し、xyz方向にそれぞれ10セル程度の範囲を衝突領域と定義した。分子同士の衝突は弾性散乱を仮定した。衝突を考慮した計算では、実験で得られた角度依存性を定性的に再現することが可能となった。ただし、定量的には不一致が見られたことから、モデルで考慮されていない要素 (分子同士の非弾性散乱の効果など) の重要性が示唆された。これら一連の成果について、国際学会で発表するとともに、学術誌論文として投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験および解析は、ほぼ当初計画通りに進行している。得られた成果について学会発表を行うとともに、学術誌への論文投稿も行った。総合的に見て、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
高時間分解能の質量分析計を用いて、脱離ガスの分子運動速度の直接測定を行う。衝突に伴う分子運動速度分布の変化を明らかにすることで、モデルで考慮されていない非弾性散乱の効果について検証を行う。
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