研究課題/領域番号 |
17H01864
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
奥田 知明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (30348809)
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研究分担者 |
深潟 康二 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (80361517)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 環境分析 / 大気汚染防止・浄化 / 環境質定量化・予測 / エアロゾル / 帯電状態 |
研究実績の概要 |
大気エアロゾルは、呼吸によって生体内に入り込み健康に悪影響を及ぼすことが知られている。エアロゾルの帯電状態については、それが粒子の生体沈着に関わるため重要であるにも関わらず、ほとんど研究が進んでいない。そこで本研究では、実環境大気中エアロゾルの帯電状態を解明することを目的として研究開発を行った。平成29年度は、実環境大気エアロゾルの帯電状態の計測手法の開発およびフィールド調査を進め、下記に示す重要な成果を得た。
電気移動度法による実環境大気エアロゾルの帯電状態の測定装置は以下の通り作製した。電極板の幅10 cm、長さ20 cm、極板間距離0.5 cm、および極板間電圧400 V。エアロゾル導入流量は0.5 L/min、清浄空気導入流量は 1.0 L/minとした。これを基本条件とし、流量のみ変化させていったところ、流量を基本条件の4倍まで上げても、粒子の帯電状態の測定結果は変わらないことがわかった。次にエアロゾル導入流量を1.2 L/min、清浄空気導入流量は 4.8 L/minとし、極板間電圧を+200V, +400V, -400Vとして、装置出口下流にてエアロゾル粒子をフィルターへ捕集した。なお、フィルター上におけるエアロゾル粒子の捕集径は、分析装置(蛍光X線)のビーム照射径(20mmφ)に最適化した。各フィルター上に採取されたエアロゾル中の元素分析を行ったところ、エアロゾル中の元素組成の違いによって、粒子の帯電状態が異なっている可能性が示唆された。特にCaについては、他の元素成分とは異なる帯電状態を有している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実環境大気エアロゾルの帯電状態の計測手法の開発、およびエアロゾルの帯電状態のフィールド調査、ともに大きな問題なく現在まで進めている。従って、達成度は、おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、KPFM法による個別粒子の帯電状態計測を進める。KPFMは走査型プローブ顕微鏡の手法を利用した測定の一つであり、先端の曲率半径が数nmと小さいプローブと試料間の静電気力を検出することが可能である。本研究では、エアロゾル個別粒子の帯電状態をKPFMで、また化学組成を走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置 (SEM/EDX) で測定し、エアロゾル個別粒子に対して帯電状態と化学組成を同時に解明することを試みる。実環境大気エアロゾル粒子はグリッド付きガラス基板(松波硝子工業GC1300、13 mmφ、厚さ150 μm)上に慣性衝突により捕集する。KPFM測定には島津製作所製SPM-9700を、カンチレバーにはn型ドープシリコン (オリンパス、OMCL-AC240TS、比抵抗:0.01~0.02 Ω・cm、カンチレバー長さ/幅/厚さ: 240/40/2.3 μm、探針高さ:14 μm、探針先端曲率半径:7 nm、バネ定数:2 N/m、共振周波数:70 kHz) を使用し、非接触振幅変化検出方式を用いる。KPFM測定後、ガラス基板上のグリッドを用いて同一視野のSEM/EDX観察を行う。真空デバイス社製HPC-1SW を用いてOsコーティングを施した上でSEM/EDX (FEI SIRION FE-SEM/BRUKER AXS 4010)による二次電子像解析および特性X線による化学組成分析を行う。また、本学(慶應大、横浜市)屋上において実環境大気エアロゾルの帯電状態の長期連続的な計測を行う。電気移動度法によるリアルタイム計測と、KPFM法による個別粒子のバッチ計測を並行して行う。
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