研究課題
本年度は、スモッグチャンバー内のシクロヘキセン(C6H10)のオゾン分解反応で生成した二次有機エアロゾル(SOA)粒子を、加熱脱着粒子前処理プロトン移動反応質量分析計(TD-PTRMS)によってオンライン分析した。シクロヘキセンは、α-ピネン等植物起源揮発性有機化合物のモデル分子であり、α-ピネンに比べて分子構造が単純で生成物の分子構造の推定が容易であることから、TD-PTRMSをテストするためのSOA前駆体として選ばれた。TD装置の前段に活性炭フィルターを装着してガス状の有機物を除去することにより、ほぼ粒子状の有機物のみが透過することを確認した。活性炭フィルターおよびTD装置を通したPTRMS測定(粒子成分のみを測定)と、テフロン膜フィルターのみを通したPTRMS測定(ガス成分のみを測定)を10分ずつ交互に行いながら、シクロヘキセンのオゾン分解反応で生成するSOA粒子とガスの混合物を、リアルタイムで分析した。昨年行った単一成分有機エアロゾルの分析結果から、アルコールおよびカルボン酸を分析した場合、プロトン化生成物(M + H)だけでなくプロトン化生成物の脱水により生じるイオン(M + H - H2O)も検出されることが明らかになった。シクロヘキセンから生成した生成物についても同様なフラグメンテーションが起こると仮定してSOA粒子の質量スペクトルを解析した結果、二次有機エアロゾル粒子中にアジピン酸およびグルタル酸など既知のジカルボン酸生成物に加え、高度酸化分子(C6H10Ox, x<=6)が生成していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
昨年度に実施が遅れていた研究に加え、当初よりH30年度に実施することを予定していた研究を実施した。具体的には、研究実績の概要に記した通り、シクロアルケンのオゾン分解の実験およびそのデータの解析を行ったほか、研究実績の概要には記さなかったが、モノテルペンのオゾン分解で生成するSOAに関する研究とそのデータ解析にも着手した。
H31年度(R元年度)に行う予定の研究を計画通りに実施する。具体的には、モノテルペンのオゾン分解で生成するSOAのTD-PTRMS測定およびデータ解析を、昨年度に引き続いて行う。また、TD-PTRMSを大気エアロゾルの観測に活用し、大気有機エアロゾルの測定時に観測される信号があればその質量数の情報を得る。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Atmospheric Chemistry and Physics
巻: 19 ページ: 14901-14915
10.5194/acp-2018-1291
エアロゾル研究
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Environmental Science & Technology
巻: 52 ページ: 8456-8466
10.1021/acs.est.8b01285
http://www.nies.go.jp/researchers/100110.html