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2018 年度 実績報告書

海氷減少が北極陸域水循環に与える影響の実態解明

研究課題

研究課題/領域番号 17H01870
研究機関国立研究開発法人海洋研究開発機構

研究代表者

朴 昊澤  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 北極環境変動総合研究センター, ユニットリーダー代理 (10647663)

研究分担者 大島 和裕  公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 任期付研究員 (40400006)
一柳 錦平  熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (50371737)
吉川 泰弘  北見工業大学, 工学部, 准教授 (50414149)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード海氷減少 / 水循環 / 同位体 / 陸面過程モデル / 全球同位体循環モデル
研究実績の概要

海氷減少が陸域の水循環に及ぼす影響を評価するために、起源追跡が可能になる同位体比に着目して観測とモデリングの研究手法を用いて、年度研究計画に従って分担者と連携して得られた研究成果を国内外の各種研究集会で発表し、論文公表を行った。
・降水サンプリング:既存の観測点に加えて、極地研究所の協力を得てカナダのキャンブリッジベイとロシアのケープ・バラノバに観測点を新設して降水サンプリングをスタートした。また、国内外の研究機関の協力を得て、前年度と同様に研究船の北極航海時に降水サンプリングを実施した。特に、R/V MIRAIは10-11月に北極海のを航海したため、普段難しい冬季の降水サンプリングができた。
・水蒸気フラックスの解析:前年度までに研究船の北極航海や北極沿岸域で観測が実施された、主に夏季を中心に気象データ(大気再解析)による水蒸気フラックスの解析を行った。関連して、シベリア水循環についての研究結果を論文にまとめ、これまでの研究成果をもとに東シベリアの大気水循環に関する総論をまとめた。
・モデル実験:10年以上の降水同位体比の観測データが有効であるシベリアのティクシにおいて全球同位体循環モデルが観測値の季節・経年変化をよく計算できていたことを確認した。そのモデルの結果を陸面過程モデルCHANGEの入力値として与えた結果、同位体比フラックスの季節・経年変動、及び土壌水分の同位体比プロファイルの観測値がモデルによってよく計算できたことを確認した。また、河川氷の融解時に発生するアイスジャムプロセスのモデル化のための室内実験テストを行った。CHANGEモデルとの融合のため、全球同位体循環モデルを用いて海氷の季節・経年変化を与えた実験を行った。全球同位体循環モデルが実施した同様の海氷変化の実験を大気循環モデルを用いて行い、両者の結果が類似していたことを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アメリカの北極海プロジェクトであるNABOS-IIの北極海航海に参加して降水サンプリングを予定していたが、海外研究者の参加が認められなかったため観測ができなかった。しかし、その以外の海洋と陸域でのサンプリング、及び2ヶ所の北極海の島における観測点の新設による観測は計画通りに進んだ。
前年度において、全球同位体循環モデルを用いた海氷変化の実験結果ではモデルの高温バイアスの問題が見られたが、そのモデルの結果が妥当であることを確認した。しかし、その結果を利用するのは困難であったため、新たなモデル実験デザインを工夫して多数のモデル実験を行った。また、陸面過程モデルCHANGEの同位体比フラックスの計算結果が観測値と一致していたことも確認した。このような進捗状況から当初の研究計画が概ね順調に進んでいると言える。

今後の研究の推進方策

本科研費で構築した降水の同位体比の観測点は、国際原子力機関や国際研究プロジェクトなどの降水同位体ネットワークの空白に位置しているため、そのデータの価値は高い。ここで得られた観測データは、現在フィンランドのOulu大学の研究チームが実施している環北極降水同位体ネットワーク(PAPIN)に参加して、PAPINの観測データと再解析データの解析を行い、海洋ー陸域間の水蒸気輸送のパタン及びその季節・経年変化を定量化する。
海氷の季節・経年変化を与えた全球同位体循環モデルの計算結果をCHANGEモデルの入力値に与えて、陸域の水循環に対する海氷変化の影響を評価する。大気循環モデルの実験結果を用いて同様の評価を行う。これらを次年度の重点課題にして研究を実施する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Modeling the Effect of Moss Cover on Soil Temperature and Carbon Fluxes at a Tundra Site in Northeastern Siberia2018

    • 著者名/発表者名
      Park Hotaek、Launiainen Samuli、Konstantinov Pavel Y.、Iijima Yoshihiro、Fedorov Alexander N.
    • 雑誌名

      Journal of Geophysical Research: Biogeosciences

      巻: 123 ページ: 3028~3044

    • DOI

      10.1029/2018JG004491

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Influence of atmospheric internal variability on the long-term Siberian water cycle during the past 2 centuries2018

    • 著者名/発表者名
      Oshima Kazuhiro、Ogata Koto、Park Hotaek、Tachibana Yoshihiro
    • 雑誌名

      Earth System Dynamics

      巻: 9 ページ: 497~506

    • DOI

      10.5194/esd-9-497-2018

    • 査読あり
  • [学会発表] Changes in Arctic hydrological cycle in the context of rapidly changing climate2018

    • 著者名/発表者名
      Park Hotaek, Yang Daqing, Zhang Xangdong
    • 学会等名
      POLAR2018
    • 国際学会
  • [学会発表] Moss cover induced cooler soil temperature limits carbon flux of a Siberian tundra2018

    • 著者名/発表者名
      Park Hotaek, Launiainen Samuli
    • 学会等名
      UArctic Congress 2018
    • 国際学会
  • [学会発表] Warming water in Arctic terrestrial rivers under climate change2018

    • 著者名/発表者名
      Park Hotaek, Yoshikawa Yasuhiro, Oshima Kazuhiro, Yang Daqing
    • 学会等名
      2018 AGU Fall Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] 北極の大気・陸域水循環について2018

    • 著者名/発表者名
      大島和裕
    • 学会等名
      平成30年度北極域研究共同推進拠点(J-ARC Net)研究者コミュニティ支援事業 「北極海環境変動に関する発展的な異分野連携共同研究策定のための研究集会」

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公開日: 2019-12-27  

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