研究課題/領域番号 |
17H01872
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
日出間 純 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (20250855)
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研究分担者 |
佐藤 修正 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (70370921)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | UVB防御機構 / 植物 / DNA損傷 / 光修復酵素 / オートファジー / 葉緑体定位運動 / オルガネラ障害 |
研究実績の概要 |
本研究では、植物細胞内の各オルガネラDNA上に蓄積したCPDが、各オルガネラの機能障害、オートファジー誘発、そしてUVB抵抗性に及ぼす影響を解析することで、各オルガネラにおけるUVB誘発DNA損傷の蓄積と修復の生理学的意義を明らかにすることが目的である。 【課題1】イネPHRの葉緑体移行シグナル配列の同定と移行メカニズムに関する解析:未同定であったイネPHRの葉緑体移行シグナル配列は、イネPHRのN末端1-47のアミノ酸がシグナルペプチドとして機能していることを、イネ幼植物葉を材料に、イネPHRの部分配列を用いたトランジェット解析、イネ形質転換体を用いた解析から明らかにした。さらに、葉緑体への移行は、小胞輸送ルートで移行している可能性を、小胞輸送阻害剤であるBFAを用いた解析から見出した。 【課題2】PHRのオルガネラ局在の有無がUVBによるオルガネラ障害、UVB抵抗性に及ぼす影響:核、葉緑体、またはミトコンドリアのみでPHRが機能し得る、および各オルガネラのみで機能出来ない組換え体植物(シロイヌナズナおよびイネ)の作製を試みた。現時点で、PHRが核・および葉緑体に移行できない組換え体の作製に成功したが、ミトコンドリアへの移行を阻害した組換え体の作製には至っていない。 【課題3】】オルガネラDNA損傷の蓄積が、オートファジーによる障害オルガネラの除去、細胞死誘導に及ぼす影響解析:各オルガネラの動態を可視化できる組換え体を用いて解析を進めたところ、当初の予想に反し、細胞内ではUVB障害を受けないように各オルガネラが細胞壁側に逃げる現象を見出した。この現象は葉緑体定位運動に由来すると考え、葉緑体定位運動を欠失した組換え体を作製し、解析した結果、葉緑体定位運動を欠失した組換え体はUVB感受性を示し、葉緑体定位運動がUVB防御においても重要な役割を演じているという新たな事実を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、実験過程で当初予想していなかったオルガネラ定位運動がUVB防御に重要な役割を演じているという、新たな事実を見出した。本研究結果を想定した実験課題は、当初の計画には入れていなかった。しかし、本研究課題を遂行する上で、極めて重要でかつ新規性が高く本課題との関連性も高い発見であったため、新たに計画に加えて進めることにした。他の研究課題に関しては、当初の予定通り、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、UVBによるオルガネラ障害とUVB抵抗性に関して、DNA損傷とその修復機構、およびオートファジー機構に着目して解析する予定であった。平成29年度の結果から、新たに葉緑体定位運動機構にも着目し、DNA損傷と修復、葉緑体定位運動によるオルガネラの細胞内配置、そしてオートファジー機構に着目し、研究を推進する。 他の研究課題に関しては、一部の課題に使用するために作製中の組換え体の作出に遅れが出ているが、方法を変更し、その後は順調に進んでいる。また、他の課題は当初の予定通り推進する。
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