研究実績の概要 |
【成果1】イネPHRの葉緑体移行シグナル配列の同定と移行メカニズム:昨年度までにイネPHRの葉緑体移行シグナル配列領域を同定し、領域内の移行に重要なアミノ酸(OsPHRの9、10番目のプロリン)を決定した。さらに解析を進めた結果、7番目のセリンのリン酸化と、これら9、10番目のプロリンが重要な配列とし機能し、この配列を含む前後5アミノ酸にタンパク質Xが結合することでPHRの葉緑体移行が制御されている可能性を見出した(論文投稿投稿中)。 【成果2】PHRのオルガネラ局在の有無とUVB抵抗性:PHRのオルガネラ局在、特に葉緑体へのPHRの局在性の植物種間差に関して、様々な植物種を材料に、細胞生物学的手法により網羅的に探索した。その結果、イネ科植物、マメ科植物のミヤコグサ、およびゼニゴケでは、PHRが葉緑体に移行し、機能しているものの、シロイヌナズナなど他の植物種では葉緑体に移行できないことを見出した。そこで、葉緑体にPHRが局在することとUVB抵抗性に関して、イネを材料に、PHRが葉緑体にのみ移行出来ない組換え体を作製し、UVB抵抗性試験を実施した結果、明らかなUVB障害が野生型と比較して確認された。一方、シロイヌナズナ等では、葉緑体への移行の有無がUVB抵抗性に及ぼす影響を確認することは出来なかった。このことは、PHRが葉緑体に移行出来ない植物では新たなUVB適応戦略、防御機構を兼ね備えている可能性が示唆された。 【成果3】UVB抵抗性とオートファジー:UVBにより障害を受けたミトコンドリアのオートファジーによる除去が、UVB感受性に深く関与していることを見出した(Gonul et al. 2020, Photochem. Photobiol. Sci.)。また、PHRが葉緑体に移行出来ない植物では、このようなオートファジーの活性が高いことが見出した。
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