研究課題/領域番号 |
17H01876
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高橋 達郎 九州大学, 理学研究院, 准教授 (50452420)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミスマッチ修復 / 相同性依存的修復 / クロマチンリモデリング / DNA二重鎖切断 / Smarcad1 / Fun30 |
研究実績の概要 |
ミスマッチ修復機構はDNA合成エラーを修復してDNA複製の正確性を高めるだけでなく、類似配列間での誤った組換えを抑制して組換えの正確性も高める、遺伝情報の品質保証機構である。しかしながら、誤った組換えを抑制する反応のメカニズム、合成エラー修復と組換え制御の分岐制御機構はよく分かっておらず、これらがクロマチン上で起こるためにどのようなサポートメカニズムが必要かもよくわかっていなかった。本研究の目的は、合成エラー修復と類似配列間組換え制御の分岐メカニズムの解明、およびそれらがクロマチン上で機能するために必要な補助メカニズムの解明である。本年度は、先年度に引き続きクロマチン上でのミスマッチ修復反応に集中して研究を進め、クロマチンリモデリング因子Smarcad1がミスマッチ修復因子MutSαによってDNA上に呼び込まれ、ミスマッチ塩基周辺のヌクレオソームの排除に機能する事を発見し、これを論文として報告した。Smarcad1はツメガエル卵抽出液中でクロマチン上でのミスマッチ修復を促進するだけでなく、出芽酵母においても(出芽酵母のSmarcad1ホモログはFun30という)ミスマッチ修復に対して促進的であり、遺伝学的解析から、この促進効果はクロマチンアセンブリー因子CAF-1と拮抗的であった。この成果は、DNAミスマッチ修復を促進するATP依存的クロマチンリモデリング因子を初めて同定したもので、クロマチンリモデリング因子とDNA修復反応の関わりについての理解を大きく進展させるものとなった。ミスマッチ修復システムによる相同組換え制御については、先年度に引き続いて関与する因子の個別の解析を進める一方で、合成エラー修復と類似配列間組換え制御の分岐を再現するシンプルなモデル系の構築も進めた。この系が完成すれば、ある特定のミスマッチ塩基から、どのようにして下流反応が決定されるかの本質に迫れると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クロマチン上でのミスマッチ修復反応については、研究を完成させ、論文として発表することができた。また、相同組換え制御の研究については、新たな実験系の構築も進展しており、関連因子についても抗体作成および抽出液での機能解析を進めている。総合的に、おおよそ順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
ミスマッチ修復機構による相同組換え制御のメカニズムについては、これまでの実験結果の詳細な理解、関与する因子の解析、新たな実験系の構築など順調に進展しており、今年度も引き続きこれらの研究の発展に努める。また、クロマチン上でのミスマッチ修復の解析から、クロマチンリモデリング因子Smarcad1がミスマッチ修復の新たな補助因子として同定された。Smarcad1は二重鎖切断損傷の削り込みに関わるとの先行研究もあり、この因子がミスマッチ修復に依存した相同組換え制御に関与するかが新たな課題である。本年度はこの点についても研究を進める予定である。
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