研究課題/領域番号 |
17H01880
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡辺 肇 大阪大学, 工学研究科, 教授 (80212322)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミジンコ / 核内受容体 / 内分泌かく乱化学物質 / モニタリング / 蛍光タンパク質 / エストロゲン |
研究実績の概要 |
人を含めて生態系を構成する生物に対する影響を評価するためには、単なる環境中の化学物質の分析・定量ではなく、生物を利用した簡便かつ的確に評価するための手法の開発が重要である。しかし今や化学物質の数は増加の一途をたどり、ケミカルアブストラクトに登録されている化学物質は7000万種を超えている。さらに、より現実の曝露に近い複合曝露影響を考慮した場合、評価すべき化学物質の数と組み合わせは膨大なものになっており、安価でハイスループットな手法の開発が必要とされている。 化学物質の作用点は非常に多岐にわたるが、低用量で影響のある化学物質の範疇のひとつとしてホルモン様化学物質があげられる。中でもステロイドホルモンは代表的なものであり高い関心を集めているが、この受容体は核内受容体として知られている。ところがヒトで機能している核内受容体はミジンコには存在しない。 そこで本研究では、核内受容体を中心とするヒト型化学物質応答システムをミジンコに導入し、その検証を行うこととした。すでに確立した遺伝子導入系を改良し遺伝子導入効率の向上を図り、ポジションエフェクトなしに効率的に外来遺伝子を導入する系を確立し、この系を用いてヒト型化学物質応答系の導入を行った。ヒト型化学物質応答系のモデル遺伝子としては、核内受容体を選択し、これらのヒト型化学物質応答遺伝子を有するミジンコを作製した。このヒト型遺伝子導入ミジンコを用いて実際に曝露を行い、導入遺伝子応答性を検証し、実際にエストロゲン様活性を有する化学物質に対して応答するこを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定である、遺伝子編集技術を用いてヒト型の核内受容体をミジンコのゲノムに導入することに成功した。またこのヒト型の核内受容体の応答をミジンコで可視化することにも成功し、論文を発表することができた。これらのことから研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、遺伝子導入法の効率化を行い、バクテリオファージのインテグラーゼを用いて効果的に外来遺伝子を導入する手法を開発する。また今回実施したエストロゲン受容体の導入に加えて、一連の核内受容体やアリルハイドロカーボン受容体などを導入する。レポーター遺伝子としては緑色蛍光タンパク質を用い化学物質曝露を定量的に検出する系を構築し、この系を用いて種々の化学物質に対する応答性を明らかにする。またこれら一連の研究と並行して、曝露とバイオアッセイのハイスループット化をすすめる。
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