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2017 年度 実績報告書

新世代ビスフェノールのシグナル毒性を増強する核内受容体協働作用機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17H01881
研究機関九州大学

研究代表者

松島 綾美  九州大学, 理学研究院, 准教授 (60404050)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード発現制御 / 生体分子 / 生理活性 / 受容体化学 / 分子認識 / 人体有害物質
研究実績の概要

ビスフェノールA(BPA)は、ポリカーボネート・プラスチックの原料として世界最大規模の生産量を誇る化学物質である。一方で、プラスチックから漏出した低用量のBPAが、特に胎児・乳幼児の脳神経系へ悪影響を及ぼすと強く懸念される内分泌撹乱物質でもある。申請者らは、エストロゲン受容体α(ERα)に対する弱いBPAの活性が、ERRγが存在すると増強される特異な現象を見い出した。そして、これがBPA低用量作用発現の根源であると考えるに至った。本研究の目的は、この発見に基づき、低用量作用の分子機構の本質を、生化学的および構造解析学的手法で解明することである。
初年度である本年度は、次世代シークエンサーを用いた網羅的塩基配列解析である先進ゲノム支援に申請したが、惜しくも採択がなかった。そこで、次年度の採択を目指し、前倒しして化合物暴露のマウス脳の準備に取り掛かり、現在も行動観察を継続中である。さらに、ERαとERβの領域欠損型受容体を作成した。加えて、ERαとERβのキメラ受容体も作成した。これらの6種について、レポーター遺伝子アッセイにより転写活性を評価した。その結果、リガンド結合部位のみならず他の領域でもリガンド依存的に転写活性に影響することが示唆された。ERRについては、当初計画に加えて、ERRα、ERRβ、ERRγの全てについて、ERαとの相互作用解析を実施することにした。現在、ERα、ERβ、ERRα、ERRβ、ERRγについて、レポーター遺伝子アッセイによる転写活性評価に加え、哺乳類培養細胞を用いたtwo-hybrid試験を実施中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

3年計画の初年度である本課題研究は、概ね計画通り順調に進展している。今年度は次世代シークエンサーを用いた網羅的塩基配列解析のために、申請計画通りに先進ゲノム支援に申請した。これは本年度の採択には至らなかった。そこで、採択後にすぐに資料を提供できるよう、前倒して化合物暴露による実験動物の行動解析を実施中である。
研究実施計画どおりにERおよびERRの領域欠損型受容体の作製と活性試験とERαとERβのキメラ受容体の作製と活性試験を実施した。ERαとERβのキメラ受容体に加えて、ドメイン欠損型の受容体の実験結果より、予想外の領域も相互作用すると考えられるという重要な知見も得られるなど、貴重な実験データが蓄積できた。そこで、追加で哺乳類培養細胞を用いたtwo-hybrid試験を実施し、詳細実験を実施しようとしているところである。また、当初計画通り遺伝子応答配列を繋ぐDNA応答配列を繋ぐスペーサー間隔の効果を解明するため、この領域の長さを変えたレポータープラスミドを作成し、その転写活性を評価した。その結果、当初の予想通りに最適な長さが存在することが判明した。現在の研究状況としては、ERRαとERRγの場合における最適な長さの違いは何が原因なのかなど、得られた結果に基づいて、立体的な位置関係を推定しているところである。
このように本研究はほぼ計画通りに推移しており、当初計画を順調に達成している。

今後の研究の推進方策

今後は、まず、引き続き平成30年度に再度先進ゲノム支援に研究支援を申請し、化合物を曝露したマウス脳における遺伝子発現の変動をシークエンサーを用いた網羅的塩基配列解析により解明することを目指す。さらに、本年度は、初年度で得られたERαとERβ及び、ERαとERRα、ERRβ、ERRγのキメラ受容体の活性を評価に基づき、これらで検出された活性の差が、ドメイン間の直接あるいは間接の相互作用によるものなのか、別の構造要因によるものなのかを明らかにする。そのために、ERとERRの機能ドメイン別の相互作用解析について、それが直接の相互作用なのか、否かを、発現タンパク質を用いてBiacoreで解析する。さらに、細胞核内で相互作用が起こるのかを、Proximity Ligation Assay(PLA)法を用いた細胞内相互作用で解析する。現時点では、ERとERRは直接に近位で相互作用するのか、あるいは複合体の一部として遠位に存在しているのか不明である。そこで、内在性タンパク質の相互作用や局在を細胞内のその場で検出できるin situ PLA法により、ERとERRが直接相互作用するのか、それとも介在因子があり遠位に位置するのかを明らかにすることができる。これらに加え、脳神経系細胞におけるBPA暴露による協働作用の同定と標的遺伝子の解明を目指して、神経細胞モデルとして用いられるPC12細胞や、ヒト神経芽細胞腫由来のSH-SY5Y細胞において、BPA暴露による低用量効果を調べる。

  • 研究成果

    (20件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (18件)

  • [雑誌論文] Homodimer function of human nuclear receptor ERRα evidenced using α-helix peptides in the dimer interface2018

    • 著者名/発表者名
      Liu, X., Nakagawa, H., Sugiyama, M., Matsushima, A.
    • 雑誌名

      Peptide Science 2017

      巻: 2017 ページ: 190-191

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Docking simulation to elucidate the labeled cysteine residue of the nociception receptor ORL1 using a Cys(Npys)-containing peptide ligand2017

    • 著者名/発表者名
      Matsushima, A., Nishimura, H., Matsuyama, Y., Liu, X., and Shimohigashi. Y.
    • 雑誌名

      Peptide Science 2016

      巻: 2016 ページ: 87-88

    • 査読あり
  • [学会発表] Evaluation of Halogen Interaction between Nuclear Receptors and Halogen-Containing Environmental Chemicals2017

    • 著者名/発表者名
      松島綾美
    • 学会等名
      第1回 九州大学女性研究者ダイバーシティシンポジウム―理工系分野―
  • [学会発表] エストロゲン応答配列をつなぐリンカー塩基数とERα-ERRα協働効果の相関解析2017

    • 著者名/発表者名
      西元敦也、十時崇彰、劉暁輝、松島綾美
    • 学会等名
      環境ホルモン学会第20回研究発表会
  • [学会発表] Risk Science of Halogen-containing Environmental Chemicals and Nuclear Receptors2017

    • 著者名/発表者名
      松島綾美
    • 学会等名
      エネルギー・環境・資源問題の解決に繋がる革新的材料創出に向けた光・量子ビーム応用技術調査専門委員会第2回研究会
  • [学会発表] ビスフェノールA暴露によるマウス低活動性症状は概日リズム伝達神経ペプチド遺伝子の発現異常を伴う2017

    • 著者名/発表者名
      杉山真季子、松山祐昂、劉暁輝、松島綾美、下東美樹、下東康幸
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会
  • [学会発表] 甲状腺ホルモン受容体の転写活性は構成的自発活性な核内受容体により強く増強される2017

    • 著者名/発表者名
      松山祐昂、劉 暁輝、杉山真季子、松島綾美、下東美樹、下東康幸
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会
  • [学会発表] 不活性なERα-AF1ドメイン欠損体は自発活性化型核内受容体ERRにより活性化される2017

    • 著者名/発表者名
      劉暁輝、松山祐昴、杉山真季子、松島綾美、下東美樹、下東康幸
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会
  • [学会発表] 有害化学物質・新世代ビスフェノール類のエストロゲン受容体βに対する結合試験2017

    • 著者名/発表者名
      枡屋宇洋、波佐間裕太、劉暁輝、袈裟丸仁志、野瀬健、松島綾美
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会
  • [学会発表] エストロゲン受容体αに結合する環境化学物質・新世代ビスフェノール類のライブラリースクリーニング2017

    • 著者名/発表者名
      松島綾美、枡屋宇洋、劉暁輝、下東康幸
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会
  • [学会発表] 環境化学物質と核内受容体のハロゲン結合2017

    • 著者名/発表者名
      松島綾美
    • 学会等名
      ナノ学会構造物性・機能応用両部会合同シンポジウム
  • [学会発表] Homodimer function of human nuclear receptor ERRα evidenced using α-helix peptides in the dimer interface2017

    • 著者名/発表者名
      劉暁輝、中川裕之、杉山真季子、松島綾美、下東美樹、下東康幸
    • 学会等名
      第54回ペプチド討論会
  • [学会発表] Phe2715.39 of thrombin receptor PAR-1 is a specific target of Phe-2-phenyl group of its tethered ligand2017

    • 著者名/発表者名
      杉山真季子、藤田亜美、劉暁輝、松山祐昂、松島綾美、下東美樹、下東康幸
    • 学会等名
      第54回ペプチド討論会
  • [学会発表] Mutual co-work between human nuclear receptor ERα and ERRγ requires their homodimerization2017

    • 著者名/発表者名
      劉暁輝、下東美樹、杉山真季子、松島綾美、下東康幸
    • 学会等名
      第54回ペプチド討論会
  • [学会発表] 現代社会のリスクサイエンスとホルモンの受容体2017

    • 著者名/発表者名
      松島綾美
    • 学会等名
      日本ペプチド学会市民フォーラム2017
  • [学会発表] 女性ホルモン受容体の三点変異によるリガンド結合能と活性変化の相関解析2017

    • 著者名/発表者名
      枡屋宇洋、倉八大樹、劉 暁輝、松島綾美
    • 学会等名
      第54回化学関連支部合同九州大会
  • [学会発表] エストロゲン受容体のリガンド結合領域3残基同時変異体のリガンド結合性変化2017

    • 著者名/発表者名
      枡屋宇洋、倉八大樹、劉 暁輝、松島綾美
    • 学会等名
      平成29年度日本生化学会九州支部例会
  • [学会発表] ビスフェノールA暴露・低活動性症状マウス脳内の自閉症関連遺伝子の発現解析2017

    • 著者名/発表者名
      杉山真季子、松山祐昂、劉 暁輝、松島綾美、下東美樹、下東康幸
    • 学会等名
      平成29年度日本生化学会九州支部例会
  • [学会発表] 自発活性化型核内受容体ERRα、ERRβ、ERRγは異なった作用様式で甲状腺ホルモン受容体を活性増強する2017

    • 著者名/発表者名
      松山祐昂、劉 暁輝、杉山真季子、松島綾美、下東美樹、下東康幸
    • 学会等名
      平成29年度日本生化学会九州支部例会
  • [学会発表] 不活性なAF1ドメイン欠損ERαは自発活性化型核内受容体ERRの協働作用により活性化する2017

    • 著者名/発表者名
      劉 暁輝、松山祐昂、杉山真季子、松島綾美、下東美樹、下東康幸
    • 学会等名
      平成29年度日本生化学会九州支部例会

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公開日: 2019-12-27  

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