研究実績の概要 |
化学物質影響がゲノムに記憶されるエピジェネティック毒性のリスクが指摘されているが、その対応はほとんど進んでいない。その原因として、エピジェネティック毒性の検出手法が高度な生化学解析技術を要し毒性試験となじまないことに加え、毒性試験データからエピジェネティック毒性を検出することがそもそも容易ではないことがあげられる。本研究では、申請者が作製した観察が容易なマーカーによってエピジェネティック毒性の有無を組織像上で検出するレポーターマウスの実践的な活用を検討する。そのために、申請者が開発を進めているエピジェネティック毒性レポーターマウスを用い、通常の毒性試験と同じ手続きでエピジェネティック毒性の有無を判定可能とするシステムを普及するために必要な検討を行う。具体的には、本マウスの1)背景データの取得、2)評価基準の確立、3)候補物質の作用評価、を行う。これにより、本マウスを用いた化学物質のエピジェネティック毒性判定の基本プロトコールを作成する。 レポーターはAgouti-IAP, Daz1のDNAメチル化応答領域にTdTomatoを連結したものを用い、各々のベクターをPiggyBacシステムでゲノムに導入した遺伝子改変マウスを作製し用いている。今年度は各マウスの詳細な解析を進めるために、各マウスについて複数得られているラインについて、レポーター発現度をIVIS imaging systemを用い、臓器レベルで蛍光強度を指標に測定し、選別を進めたが、有望なラインが得られなかった。そこで、培養細胞でレポーター系を導入し、各応答領域が確かにDNAメチル化制御を受け、陽性化学物質の作用を定量検出出来るか確認した。その結果を論文にまとめ、エピジェネティック毒性検出用レポーターマウス開発において、少なくともレポーターシステムは妥当であることを示した。
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