研究実績の概要 |
本研究課題では、無線エネルギー送受電システムから発生する電磁環境の安全性評価を目的としている。400kHz帯域の磁界共鳴送電下における細胞影響評価に必要となる共鳴送電細胞ばくろ装置の伝送効率の向上に取り組み、 ばく露装置の細胞培養安定性を評価し、細胞培養が適正であることを確認した。令和元年度は、ワイヤレス電力伝送(WPT:Wireless Power Transmission)システムに使用される電磁波により、生体にどのような影響が見られるかを検索するため、電波の生体表面からの深度を考慮して、ヒト表皮角化細胞(HaCaT細胞、ケラチノサイト)を用い、400kHzばく露による皮膚免疫応答指標であるサイトカイン産生試験、およびヒスタミン産生試験を実施した。400kHzばく露(条件:160A/m、ICNIRPの職業者ガイドライン80A/mの2倍、1時間)を行ったHaCaT細胞において、培養液上清におけるサイトカイン(IL-6, IL-8およびGM-CSF)ならびにヒスタミンの産生影響についてELISA法により解析を行った。その結果、薬剤(イオノマイシン、または水酸化ナトリウム水溶液)によるポジティブコントールでは有意なサイトカイン産生が観察されたが、ばく露サンプルの上清ならびに細胞抽出物においてはサイトカインの上昇は観察されなかった。以上のことから、HaCaT細胞において、400kHzばく露による皮膚免疫への影響はないか極めて低いものと考えられる。
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