研究課題/領域番号 |
17H01894
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
福原 長寿 静岡大学, 工学部, 教授 (30199260)
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研究分担者 |
河野 芳海 静岡大学, 工学部, 准教授 (50334959)
渡部 綾 静岡大学, 工学部, 准教授 (80548884)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 触媒・化学プロセス / 再生可能エネルギー / 温室効果ガス削減 / 反応・分離 / 物質・熱移動 |
研究実績の概要 |
本研究は、エネルギーキャリアの一つであるメチルシクロヘキサンMCHの脱水素反応で生成するH2で、産業プロセス排出のCO2をCH4資源に変換し、また得られたCH4とCO2を再び反応させて合成ガスの製造プロセスを開拓する。再生可能エネルギーの利用と温室効果ガスの処理を目的とした新技術の開拓が目的である。平成30年度に得られた成果は以下の通りである。 1.CO2のメタン化用構造体触媒:前年度のNi/CeO2触媒をベースに、金属種と担体種の違いが反応性に及ぼす影響を調査した。その結果、Ru/CeO2触媒がNi/CeO2触媒を超えるメタン化機能を示すことや、担体種をCeO2とZrO2の複合酸化物とすることでさらにメタン化機能が向上することを明らかにした。Ru元素のCO2吸着機能とH2活性機能の複合化、および酸化物担体上へのCO2吸着サイトの増加が要因であることが推論された。 2.CH4のドライ改質用構造体触媒:スパイラル形のアルミニウム基材にsol-gel法と無電解めっき法で調製したNi/Al2O3構造体触媒について、その高いメタン化活性と高速の原料処理の要因を調査した。その結果、原料ガスのスワール流れによる物質拡散と伝熱の促進効果が大きく影響したことが推論された。また、酸素共供給によるオートサーマルドライ改質を実施し、反応性と炭素析出抑制の観点から最適なCH4/O2比を決定した。 3.脱水素・水素化の組み合わせシステム:MCH脱水素反応とCO2のメタン化反応をPd系の水素透過膜を介して組み合わせた反応システムを想定し、その数値シミュレーターを構築して理論的なシステム特性を評価した。メタン化反応の発熱エネルギーによる脱水素の加速、水素透過速度の加速、水素引き抜きによる化学平衡の制約回避の実現など、本反応システムの優位性の予測に成功した。また、本システムの熱力学的な利点も確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究では、メタン化用構造体触媒の機能性を向上するための、金属種と担体種に関した技術的な触媒設計指針を習得できたことが大きな成果の一つである。また、ドライ改質反応におけるオートサーマルの最適条件を求めたことにも意義がある。そして、脱水素・水素化の組み合わせ反応システムに関した特性予測ができる数値シミュレーターの開発に成功したことは、本研究推進における重要な成果であると考えられる。この成果は、二酸化炭素からメタン資源に変換するためのシステム開発に関して数値シミュレーション予測を可能とし、当該分野への貢献度は大きい。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究実施内容は、以下の通りである。 1.メチルシクロヘキサンの脱水素反応速度の推算:前年度までに得られたPt/TiO2構造体触媒上での動力学測定を継続する。そして、開発した数値シミュレーターにおける反応速度式に適用できる脱水素式を推算する。 2.膜分離型の脱水素・水素化反応システムの評価:上記1で推算した反応速度式を使い、開発した数値シミュレーターを駆使して、膜分離型脱水素・水素化システムの特性調査をより詳細に行なう。また、得られるシステム特性の情報から実際の反応システム設計の指針を提言する。 3.オートサーマルドライ改質反応の評価:構造体触媒上でのオートサーマルドライ改質における炭素析出耐性の要因をさらに追究する。得られる析出抑制の要因を触媒調製に反映し、その触媒特性を評価しつつ、ドライ改質のプロセスを強化する。 4.COとH2の合成ガスからのアルコール製造の検討:これまでの研究成果で最適化したメタン化触媒とドライ改質触媒の情報を駆使して、合成ガスからメタノールを製造する構造体触媒材料の開発、ならびに反応システム設計に着手する。最終的には、産業プロセス排出CO2を原料としたCH4資源化システムの開拓指針について検討する。
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