研究課題/領域番号 |
17H01895
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
日比野 高士 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10238321)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 環境技術 / 環境分析 / 触媒・化学プロセス |
研究実績の概要 |
センサ感度の向上(性能):感度が低い主な理由はPM燃焼の起こる反応場が電極内で白金と電解質の界面に限られているためである。このため、白金を電解質でコンポジット化し、電極全体を反応場にすることによって、感度の改善をある程度まで可能にした。 希少元素の代替化・使用量低減(コスト):電解質に使用する構成材料のうち、Inは高価な希少元素であるため、同じような効果が期待できるAlおよびMgで代替化を行い、電解質として十分機能できることを見出した。一方、上の白金と電解質コンポジット化において、それらを単に物理混合するのではなく、電解質表面に白金粒子を含浸法で効率よく分散することでも同様な性能を発揮させた。これによって、白金使用量を約一桁近く低減することに成功した。 機械的強度の改善(寿命):電解質に使用するSnP2O7は難焼結性であるため、このままではセンサ材料として使用できない。そこで、電解質薄膜をアルミナ基板表面に印刷することで、その強度不足を解消し、従来法と同様にカーボンをセンシングできることを可能にした。 センシング機構の解明(高機能化):電解質バルク・表面のプロトン挙動を1H MAS NMRによって観察し、そのケミカルシフト値からプロトンと格子・表面酸素の相互作用、またその緩和時間からプロトンの運動性が観察可能であることを確認した。また、カーボン燃焼させる活性酸素種をラマン分光法で動的計測するため、センササンプルやラマンホルダを改良するとともに、そこに通電することで活性酸素に起因するピークが出現することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
問題点及び課題 センサ感度の向上(性能):電極内で白金と電解質をコンポジット化することで、電極全体の反応場を増やせたが、コンポジットの複合化がまだ十分でないため、感度の劇的な改善には至らなかった。 希少元素の代替化・使用量低減(コスト):電解質に使用されているInの代替化に成功し、また電極における白金使用量の低減化にも成功した。今後はこれらのセンサでも性能や寿命をさらに改善することが求められる。 機械的強度の改善(寿命):電解質薄膜をアルミナ基板表面に焼付けることで、その強度不足を解消できたが、まだそのセンシング特性の正確な把握までには至っていない。 センシング機構の解明(高機能化):1H MAS NMRによる観察で、ケミカルシフト値や緩和時間からプロトン環境の観察には成功したが、まだそれらの定量的な情報解析を行っていない。in-situラマン分光法による計測では、その前準備が完了した段階であって、今後は活性酸素種の詳細な動的計測が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究で見出された問題点や課題を解決するため以下の研究を実施する。 センサ感度の向上(性能)および希少元素の代替化・使用量低減(コスト):電極内部に電解質を高分散させるため、電解質のサブミクロンまでの微粒子化、もしくはその電解質への白金ナノ粒子の担持化を試みる。後者は性能の改善だけでなく、白金使用料の低減化にも貢献可能である。 機械的強度の改善(寿命):SnP2O7系電解質薄膜をアルミナ基板表面に焼付け、そのセンシング特性の正確な性能・寿命試験を行い、目標値への達成度を評価する。目標値を下回るようなら、その他の手法、例えばSnP2O7コンポジット電解質焼結体の設計と合成に着手する。 センシング機構の解明(高機能化):1H MAS NMRにおけるケミカルシフト値を定量的に再現性測定するために、試料中の含水量のケミカルシフト値に与える影響を調べるとともに、プロトン核の緩和時間測定に着手し、緩和時間によってもプロトンと格子・表面酸素の相互作用が観察可能であるか検討する。さらに、in-situラマン分光法によって活性酸素種ピークの確認、およびピーク強度の電位と温度依存性を観察する。
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