研究実績の概要 |
平成30年度では、固体腐植ヒューミンの電気化学的解析、酸化還元に伴う化学構造変化の解析、ヒューミン酸化還元に関与する微生物の解析を行った。 固体腐植ヒューミンの電気化学的解析では、電気化学インピーダンス法による測定をおこなった。ナイキストプロットから等価回路を推定し、固体腐植ヒューミンの電気抵抗と電気容量を求めた。電気容量は、主に有機画分にみられた。固体腐植ヒューミンの酸化還元中心となる有機官能基は一つ一つバラバラに存在しており、その間は非導電性であることが推定された。細胞外電子伝達には水(プロトン)の電気輸送が推察された。 また、固体腐植ヒューミンの酸化還元条件下での構造変化の有無を、シンクロトロン光によるXPSのC1s測定およびXAS測定(C, N, Fe, Si, O)を行った。しかし、酸化還元による構造変化は不明瞭であった。引き続き、測定を進める予定である。なお、XPS測定では、固体腐植ヒューミンの非導電性によるチャージアップの結果起こるスペクトルのエネルギー位置のシフトのため、データ解釈が難しかった。そこで、固体腐植ヒューミンを銅粉末とともにペレット化する試料調製法を開発し、測定試料の導電性を高めシフトを最小限にすることに成功し測定を可能とした。 固体腐植ヒューミンを還元する微生物群として、炭酸水素イオンをpH緩衝剤とし、水素を電子供与体とする固体腐植ヒューミン依存性ペンタクロロフェノール脱塩素微生物群の群集構造を次世代シークエンサーによる16SrRNA遺伝子部分配列に基づき解析した。酸化型の固体腐植ヒューミンの存在下、水素無しでは嫌気性ペンタクロロフェノール脱塩素反応は観察されなかった。一方、還元型の固体腐植ヒューミンを用いたところ脱塩素反応が進んだ。ホモ酢酸生成菌により生成される酢酸を電子供与体とし、固体腐植ヒューミンを電子受容体としている微生物群が含まれていることが推定された。
|