研究課題/領域番号 |
17H01902
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松本 謙一郎 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80360642)
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研究分担者 |
大井 俊彦 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (40223713)
佐藤 敏文 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80291235)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオベースポリマー |
研究実績の概要 |
微生物産生ポリエステルは、天然では微生物が細胞内に貯蔵蓄積するポリマーである。本ポリエステル生合成系は、バイオマスを原料としてプラスチック材料を合成できる有用なシステムである。このシステムを用いると、ホモポリマーだけでなく、同一分子鎖内に複数のモノマーユニットを含む共重合体も合成可能である。その際、ポリマー鎖内のモノマー配列を制御できないの が欠点であったが、研究代表者のグループでは、モノマー配列を制御する合成方法を初めて見出した。本ポリマーは、2種類のモノマーユニットがそれぞれ単独で重合したホモポリマー構造を有する。このため、二種類のホモポリマーセグメントが同一分子鎖内にあるのか、2種類のホモポリマーの混合物であるのかの判断が鍵であった。研究代表者のグループでは、2つのホモポリマーの溶媒溶解性の違いを利用して、通常は溶媒分離可能な2つのポリマーが、本条件で合成したポリマーの場合分離できないことを示した。このことは、得られたポリマーがブロック共重合体であることを支持した。さらに、ブロック共重合体に特徴的なミクロ相分離構造を検出したことから、得られたポリマーがブロック共重合体であることを示した。次に、このような配列制御性がなぜ生じるのかを、ポリマー合成系酵素の酵素学的性質から推定した。その結果、今回使用した重合酵素は、片方のモノマーの重合速度がもう片方より圧倒的に速く、この速度の違いが配列を生じる原因の一つであることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
配列制御性について、ポリマー構造の確認に加え、生合成機構も解明し、これらの結果を論文発表した。現在は、新規ポリマーの合成条件の探索を行っているが、この進捗状況も含めて、おおむね計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
微生物産生ポリエステルの物性は、構成するモノマーユニットの構造によって大きく変化する。既往の研究から、微生物産生ポリエステルのモノマーユニットのうち、中鎖モノマーと呼ばれる炭素数が6~12の3ーヒドロキシアルカン酸ユニットを含むポリマーは、柔軟な物性を有することが知られている。このことから、中鎖ユニットを含む配列制御型ポリマーが合成できれば、材料に柔軟性を付与できると期待される。そこで本年度は、中鎖モノマーの供給系を大腸菌に導入し、重合系とともに発現させることで、中鎖モノマーを含むポリエステルの合成条件を探索する。大腸菌株、モノマー供給酵素について、いくつかの条件を検討し、得られた菌体を分解して低分子量化させたのち、ガスクロマトグラフィーでモノマー成分を分析することにより、得られたポリマーの量とモノマー組成を測定する。ポリマーの蓄積が確認された条件が見つかった場合、培養体積を増やしてポリマー合成を行い、得られた菌体をクロロホルム抽出に供することにより、菌体内に蓄積されたポリマーを抽出する。その後、菌体成分を濾別することにより、純粋なポリマーとして単離する。得られたポリマーを核磁気共鳴測定装置により解析することにより、ポリマー中のモノマーユニットの配列構造を解析し、目的とする配列制御性が得られているか判断する。上記の実験により、中鎖ユニットを含み、何らかの配列制御性が認められるポリマーが得られた場合、ポリマーの合成量をさらに増大させ、ソルベントキャストフィルムを作成する。得られたフィルムの機械的性質を測定することで、ポリマーの構造と物性の相関関係を明らかにする。その結果に基づいて、より優れた物性を示すポリマーの分子設計を行う。
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