研究課題/領域番号 |
17H01903
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
我妻 和明 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30158597)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リサイクル / アルミニウム素材 / 品番毎選別 / レーザー誘起プラズマ発光分析 |
研究実績の概要 |
アルミニウム素材リサイクルの一つの理想型である"展伸材to展伸材"の再生利用を実現するために、展伸材の品番別選別のための含有元素情報と、リサイクル材の品位評価のための重要指標である粗大金属間化合物の含有量を同時に評価することができる、レーザー誘起プラズマ発光分析装置を開発した。アルミニウムスクラップ素材の含有合金元素に注目した、製品品番毎の選別は、資源循環型社会の構築、金属資源の高度循環利用において特に重要となっている。本研究で開発したレーザー誘起プラズマ発光分析装置は、品番により異なる合金元素の種類や含有量を高精度かつ短時間で判定できる能力を持つため、アルミニウム素材の選別現場において運用することが可能である。その分析情報は、アルミニウム素材の高度選別に関する課題解決に資するものである。 高精度な元素分析とレーザービームの試料表面を同時に行うため、3次元精密移動ステージ上に試料室を設置する構造の装置を組み立てた。この装置を用いた場合の、元素の検出限界や定量下限等の定量分析特性、加えてレーザー走査時の空間分解能を評価した。基礎的実験から、レーザー照射源及び発光分光器の測定諸元の最適化を行うことができた。それら分析条件に関する最適化の結果、本装置はアルミニウム素材のリサイクル工程において有益な情報をもたらことが期待できる。 2018年度までに得られたと測定装置と分析条件を用いて、2019年度にはアルミニウム合金標準試料及び市販のアルミニウム素材の選別を行いその有用性を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、実際スクラップ試料へ応用するため、レーザー照射条件及び発光信号を検出する測定条件の最適化に関する研究を行った。レーザー出力、レーザー繰り返し周波数、発光信号の検出タイミング時間等、最適な装置・測定条件についての情報が得られた。 開発した分析装置の特性を評価するために、ステンレス鋼試料に含有されるアルミナ介在物の3次元分布を評価する実験を行った。その結果として、粒径が数10マイクロメータの介在物粒子の試料中における分布を迅速で簡便な方法で測定できることがわかった。この成果に基づき、引き続いて、アルミニウム合金を供試試料として、元素含有量の情報に基づくアルミニウム合金の品番選別とその粗大介在物の分布を評価する研究を継続中である。 実際試料では形状が様々であるため、試料表面にレーザー焦点を合わせる必要がある。この操作を自働で行うために、可変焦点レンズを用いたレーザー照射系を製作しその性能を評価した。その結果として、移動中の試料についてレーザー光の照射と発光信号の取得が可能であることがわかった。この技術は実際分析装置の応用分野を広げることができるため有用である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、前年度までに開発した走査レーザー誘起プラズマ発光分析装置を用いて、アルミニウムリサイクル素材の合金組成に基づく選別について検討する。日本アルミニウム協会頒布のアルミニウム合金標準試料を用いて、元素含有量と発光強度の相関(検量線)を得る。さらに、市販のアルミニウム合金、A1050、A1100、A2017、A2024、A5052、A5083、およびA6061の7種の品番について選別を試みる。また、リサイクルアルミニウム素材を再溶解したインゴット中の介在物を測定を行い、その金属組織に含まれる介在物粒子の同定とその空間分布に関する測定を行う。 アルミニウム素材のリサイクルプロセスでは、合金品番毎の選別が重要であるが、許容できる介在物の種類と量も再生製品の品質管理の判断指標であり、その値はリサイクルする実際の製品グループによって異なる。ビーム走査において得られるレーザー誘起プラズマ発光分析からの情報の有用性に関して検討を行う。 走査レーザー誘起プラズマ発光分析法は、試料の前処理が不要であるため、製造現場におけるオンサイト分析が可能で、分析応答時間も短時間であることから、アルミニウム素材の高度選別を実現するために有力なツールとなることを提案する。
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