研究課題/領域番号 |
17H01905
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
倉持 秀敏 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 室長 (50353537)
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研究分担者 |
前田 光治 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (00264838)
小林 拓朗 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 主任研究員 (10583172)
松神 秀徳 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 研究員 (10639040)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオガス / 廃棄物再資源化 / メタン発酵 / 残留性有機汚染物質 / 多媒体モデル / 運命予測 / 分配係数 / 微生物分解 |
研究実績の概要 |
メタン発酵原料を汚泥等との混合ごみとした複数施設において、前年度と同様に試料を採取し、各試料中のポリ臭素化ジフェニルエーテル類(PBDEs)等の新規残留性有機汚染物質(POPs)とPBDEsの代替としても使用されるリン系難燃剤(PFRs)も新たに含めて環境汚染物質等の濃度を分析し、各プロセスにおける各媒体への分配挙動と施設外への排出実態を明らかにした。また、そのデータを基に目的である施設内の物質フローを整備することができた。PFRsの濃度はPBDEsよりもかなり高く、PFRsは汚泥だけでなく水系への移行にも注意が必要であることが示唆された。また、本年度の調査においても原料等により濃度レベルが異なることが示唆された。 PBDEs等を含むメタン発酵に関する実験については、PBDEsに対して汚泥中の溶存有機炭素(DOC)と水間の分配係数(KDOC)を測定した。発酵温度の影響として、高温発酵汚泥由来のDOCに対してPBDEsはより吸着しやすいことを示した。また、DOCの官能基等の構造とKDOCとの関係を解析し、相関式を提示した。一方、主に10臭素化ジフェニルエーテルを含有する製品の発酵分解試験を実施し、高温発酵においてより分解が進行するものの、完全にメタンまで分解することは困難であることが明らかとなった。 前年度構築した多媒体モデル(施設内の挙動予測モデル)について計算対象物質をPFRsへ拡張した。さらに、調査実施設へ適用し、実施設を結果の再現を目指して多媒体モデルをチューニングするとともに、施設内の分配特性を踏まえて排出削減方法を検討した。 新規迅速物性測定法の開発については、ヘンリー定数の測定装置を試作し、いくつかの標準物質を用いて測定を行い、課題の抽出から対策法を提示し、新規測定技術として確立できつつある。また、他の物性への拡張を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオガス化施設のサンプリング調査については、測定対象物質を増やしながらPOPs等の濃度レベル及び施設内におけるフローを把握し、施設間の違いを明らかにできた。 メタン発酵に関する実験では、発酵槽内のPBDEsの挙動を理解するために重要な分配係数や分解特性をまとめ、成果を複数の国際誌にに論文として発表した。 多媒体モデルの実施設へのカスタマイズでは、実施設を再現するための工夫や対象物質を広げることで新たな課題等が見つかり、モデルの高度化に進歩があった。 ヘンリー定数の測定では、当初様々な課題が明らかになったが、概ね対応でき、測定において妥当な値を得つつある。また、本方法について、別の分配係数の測定への応用の可能性も見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
バイオガス化施設の調査については、公表に関して理解が難しい施設もあり、丁寧な説明と調査施設数を増やす必要がある。なお、先進的なシステムを意識して調査を進める。また、POPsの中でも検出下限未満となる物質があり、簡易スクリーニングを行い、濃度の高い物質についても検討を行う。 メタン発酵に関する実験では、施設調査で濃度が高い物質について溶存有機炭素が及ぼす水への分配特性と分解特性への影響を議論しながら、より分解性の向上を意識した実験を進める。 多媒体モデルの開発では、 さらに対象物質を拡張して、多媒体モデルの適用を進めるとともに、環境排出削減法とその効果を提示し、安全性の観点から残渣の適正処理法や有効利用法も提示する。 新規迅速物性測定法の開発については、溶媒が測定に与える影響が大きいことから、それを改良して他の物性も測定することを試みる。また、実発酵液における物性測定にも挑戦する。
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