研究課題/領域番号 |
17H01908
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
河井 一明 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (60161262)
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研究分担者 |
李 云善 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 講師 (90449950)
川崎 祐也 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (30721716)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バイオマーカー / 酸化ストレス / 8-ヒドロキシグアニン / 8-ヒドロキシデオキシグアノシン |
研究実績の概要 |
平成29年度は、唾液中8-ヒドロキシグアニン(8-OHGua)の酸化ストレスバイオマーカーとしての有用性を評価するための分析方法の検討ならびに動物を用いた基礎的な研究を行うと共に、少人数のヒトでの分析を実施した。唾液中8-OHGuaをHPLC-ECD法によって精度良く効率的に分析する方法と、タンパク分解酵素を用いる唾液の前処理方法を確立し、学会および論文にて発表した。これにより、平成30年度から実施予定のヒトの集団での調査に於いて、多数の検体を測定する事が可能となった。動物を用いた実験では、マウスにX線照射や運動負荷などの酸化ストレスを与え、8-OHGuaの変動を測定したが、control群と比べて有意な変化は見られなかった。その理由として、唾液採取時に用いる麻酔の影響が考えられることから、実験条件を見直して検討を続けたい。さらに、約10名のヒトを対象に、経時的に唾液を採取して8-OHGuaレベルを測定した。その結果、喫煙者で高い傾向を認めた。また、唾液中の8-OHGuaの値には日内変動があることが分かり、早朝に高い傾向があることが明らかとなった。よって、唾液採取は午前10時以降が適当と考えられる。これまでに、魚などに8-OHGuaが多く含まれていることを見出していることから、食事の影響を検討した。現時点までの結果では、8-OHGuaを含む食品を多く摂取しても、唾液中レベルに顕著な影響を与えなかった。唾液中8-OHGuaは、食事の影響を受けにくいと考えられるが、より確かな結論を得るために、今後ヒト集団での調査を行う場合に、食事内容についても同時に調査したい。さらに、平成30年度から研究協力事業所で行う調査について、具体的な実施方法を検討し、事業所に説明を行って了承を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で示したとおり、平成29年度に計画した研究内容は、概ね計画通り行うことができた。特に、本研究テーマの中心である唾液中の8-OHGuaの正確で効率的な測定方法を確立できたことは、今後予定されているヒト集団での調査に於いて意義が大きいと考える。さらに、唾液中8-OHGuaの日内変動パターンや食事の影響などの結果が得られたことで、平成30年度に計画している研究協力企業での検体のサンプリングについて、具体的な実施方法を検討する上で有益な情報となった。これまで得られた結果を、研究参加者への生活習慣アンケート調査に反映することで、より確かな結果が得られるものと期待する。一方で、動物実験については、予想した通りの結果が得られなかったが、実験方法を改善することでより価値のある結果が得られるものと考えられる。動物実験は、唾液中8-OHGuaの生成メカニズムを考える上で欠かせないと考えられ、今後引き続いて検討したい。
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今後の研究の推進方策 |
1.継続して、マウス・ラットを用いた運動負荷試験を行い、唾液中の8-OHGuaレベルを測定して、酸化ストレスバイオマーカーとしての有用性を検証する。運動による酸化ストレスの亢進が言われていることから、ヒトを対象とした研究における運動習慣との関連性についての基礎的な知見を得る。 2.計画・準備を行ってきた、唾液中8-OHGuaのヒトを対象とした酸化ストレスバイオマーカーとしての有用性の検証実験を開始する。研究協力者が産業医として勤務する企業(研究協力承諾書を取得済み)から、研究の具体的な実施計画の承認が得られたことから、平成30年度に、当該事業所で5月から8月にかけて実施される職場健診に合わせて、唾液、尿のサンプリングならびに生活習慣調査を目的としたアンケート調査を行う。得られる尿、唾液サンプル、アンケート調査結果は、ID番号を付して整理し、産業医科大学職業性腫瘍学研究室に送付して、その後の解析に向けて保管管理する。 3.上記で得た唾液中の8-OHGua、尿中の8-OHdGの測定およびアンケートの集計、解析を行う。今回収集する検体数は、700を超えると予想されることから、全ての測定・解析を終えるのは、次年度になる予定であるが、解析途中において有意義な結果が得られた場合には、順次、学会発表を行う。
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