研究課題/領域番号 |
17H01911
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
清野 未恵子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特命助教 (40570966)
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研究分担者 |
半谷 吾郎 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (40444492)
早川 卓志 京都大学, 霊長類研究所, 特定助教 (00758493)
森光 由樹 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (20453160)
山端 直人 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (00503856)
福田 伊津子 神戸大学, 農学研究科, 助教 (50418943)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自然共生システム / 野生動物管理 / 加害レベル / 悪質化 / ニホンザル / 獣害対策 / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
日本に生息するニホンザルは、獣害問題を引き起こす群(獣害群)から自然物にのみ依存する群(自然群)まで、多様な形で存在している。本研究は、そうした異なる群間で腸内細菌叢を比較し、ニホンザルの消化システムの可塑性を明らかにすることを目的におこなっている。さらに、人と共通する腸内細菌(ビフィズス菌など)の有無など、個体や群れの加害レベル判定に腸内細菌叢を用いることができるかどうかを解明する。最終的には、加害レベル判定の指標として利用する場合にそなえて、現場で容易に判定できる手法を開発することを目的としている。
H29年度は、1)獣害群の食性の季節変化、2)群ごとの腸内細菌叢のメタアンプリコン解析を中心に研究を進めた。 一つ目の獣害群の食性の季節変化について明らかにするため、2017年6月から2018年3月まで篠山市で行動調査を行なった。その結果、秋期から冬期にかけて人工物への依存頻度が高くなることが明らかになった。二つ目の、腸内細菌叢のメタアンプリコン解析については、獣害群、放飼場群、野猿公園の群れ、自然群で糞サンプリングを行い、メタアンプリコン解析を通して腸内細菌叢を比較した。その結果、腸内細菌叢(OTU)の値に群間差がみられ、腸内細菌叢から獣害群の特徴を抽出することが可能であることが示唆された。一方で、人と共通する腸内細菌種はまだみつかっていないため、引き続き、加害レベルの高さの指標となる腸内細菌種の有無を探る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
獣害群の糞サンプリングも想定どおりに行えており、かつ、腸内細菌叢分析やその結果も、予想に反することなく、順調に進んでいる。しかしながら、獣害群と同じ地域に生息する(つまり環境条件が異ならない)自然群の糞サンプリングが課題であった。そこで、市内または隣接する市に獣害群と自然群が生息していて、かつ糞サンプリングが可能な群れが生息している地域として、青森県下北半島の群れが候補にあがった。来年度は、そこでも糞サンプリングをおこなう予定となった。
腸内細菌叢の分析は、ある程度サンプルがまとまった状態でおこなわないと予算額を超過してしまうため、年度末近くの分析になってしまい、年度の途中で早めにサンプリングの方針を議論できないことが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降の研究課題は、腸内細菌をマーカーとした加害レベル判定法の確立である。平成30年度の小課題として、1)個体の加害レベルと腸内細菌叢との対応と2)群れの加害レベルと腸内細菌叢との対応をあげている。
一つ目について、加害レベルの高い個体とその腸内細菌叢との対応を明らかにするため、兵庫県篠山市の群れについては、行動調査と糞サンプリングを続ける。群れの加害レベルは、現在、出没頻度や出没規模、人への反応、集落への加害状況、生活被害の指標を総合して算出されている。二つ目について、既存の手法で判定された加害レベルと、腸内細菌叢との関連を明らかにするため、一つの地域内に加害レベルの異なる群れが存在している篠山市、伊賀市、下北半島を対象に、糞サンプリングと腸内細菌叢の群間の比較を行う。昨年度、糞サンプリングと腸内細菌層の分析が終了している三重県伊賀市の群れについては、行動観察を追加し、獣害群の腸内細菌叢がどのような採食行動と関連しているのかを検討する。
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