研究課題
本研究では,ニホンザルの腸内細菌叢が,獣害問題を引き起こす群(獣害群)と自然群とでどのように異なるかという観点から,ニホンザルの 採食行動のみならず消化システムがどの程度変化してしまっているかを明らかにする.さらに,人と共通する腸内細菌(ビフィズス菌)などの 有無が,個体や群れの加害レベル判定に用いることができるかどうかを解明し,またその指標となる細菌を野外で簡便に抽出する手法を開発す る.現在,獣害対策に関わる人材不足により,理想とされる計画的管理に取り組めず,無計画な捕獲が進行する地域が多く存在する.腸内細菌 の分析を用いた加害レベルの判別とそれを用いてモニタリングする手法は,これからのワイルドライフ・マネジメントにおいて重要な基礎研究 となる.今年度は,放飼群・獣害群・野生群の代表的な群れで糞サンプリングを行い,腸内細菌叢を比較したところ,人間居住地との近さと腸内細菌叢との間に関連があることが明らかになり,成果を学術論文として公表することができた.今後は多様な群れの糞サンプリングをすすめ,実験・分析を行い,すでに明らかにした人間居住地との近さと腸内細菌叢の関係の更なる可能性を検討する.
3: やや遅れている
コロナ禍の社会的混乱により研究推進に遅延が生じたが、本課題に関連する研究成果をチームとして出版することができた。
コロナ禍で学会発表が難しい場合は論文出版に向けて分析及び執筆を進める。また、適宜、共同研究者とオンラインで成果のまとめに関する会議を行う。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
American Journal of Primatology
巻: 81 ページ: e23072
10.1002/ajp.23072
Wildlife Forum
巻: 24 ページ: 3-6