研究課題/領域番号 |
17H01913
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
佐藤 正典 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (80162478)
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研究分担者 |
上野 大輔 鹿児島大学, 理工学域理学系, 助教 (20723240)
藤井 琢磨 鹿児島大学, 国際島嶼教育研究センター, 特任助教 (30772462)
塔筋 弘章 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (60237047)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生物多様性 / 水生無脊椎動物 / ゴカイ類 / カイアシ類 / サンゴ類 / 日本未記録種 / 新種記載 |
研究実績の概要 |
国内では、奄美群島、大隅諸島、小笠原諸島、南鳥島、九州沿岸、瀬戸内海、東北地方沿岸において、調査を行った。また、国外では、インドネシア(アンボン島)、オーストラリア北部で調査を実施した。そこで得られた新たな標本と研究室所蔵の過去の標本を合わせて、分類学的検討を行った。 環形動物については、汽水産カワゴカイ同胞種群の北半球全体での分子系統に関する論文(南日本における特異な分布状況の記載を含む)など3編の論文を出版した。また、奄美群島の潮間帯における海産環形動物のこれまでの分布記録をまとめた総説1編を出版した。 様々な動物と共生するカイアシ類については、6新種の記載を行った学術論文4編を出版し、3新種に関する報告2編を投稿した。また、先島諸島の海底洞窟から得られたカイアシ類2新種に関する論文を準備中である。これら以外にも、多くの本邦未報告種(未記載種を含む)を発見することができた。例えば、コヤナギウミウシとイボヤギミノウミウシをそれぞれ宿主とするウミウシヤドリ科カイアシ類は2種とも未記載種であり、本邦からわずか5種しか報告のない本科の重要な知見となりうる。 刺胞動物については、奄美群島沿岸域から未記載のイソギンチャク1種、奄美群島以北での分布未記録のイシサンゴ目1種およびスナギンチャク目1種を新たに採集した。昨年度までに得られた標本群と合わせ、詳細な分類学的検討を進めている。本研究で得られた成果の一部を活用し、イソギンチャク目の分類体系に関する総説論文1編を出版した。また、本調査に伴って発見された底生性魚類1新種の記載論文1編と沖縄諸島以北分布新記録の十脚類1種の報告論文1編を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに国内では、八重山諸島(西表島)、沖縄諸島(沖縄島、久米島、沖縄トラフの深海域)、奄美群島各地(奄美大島、徳之島、沖永良部島、与論島)、トカラ列島(中之島)、大隅諸島(屋久島、種子島、口永良部島)、九州沿岸、瀬戸内海、東北地方沿岸、小笠原諸島父島列島、南鳥島において、野外調査を実施し、標本の収集を行った。また、国外では、マレーシア(トレンガヌ州)、インドネシア(アンボン島)、オーストラリア北部で調査を実施した。これらの調査で得られた新たな標本と研究室所蔵の過去の標本に基づいて、分類学的検討を進めている。一部の分類群については形態観察に加えてDNA解析も行っている。その結果、これまでに多くの新知見が得られている。 これまでの成果は、2017年度中に、合計17編の学術論文、15件の国内・国際学会で公表し、2018年度中に、合計11編の学術論文、17件の国内・国際学会で公表している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、本年度も各地において生物相調査を実施する。またこれまでの調査で発見された未記載種等について、順次、記載論文を完成させ、投稿する。 環形動物については、奄美大島以南の南西諸島の小汽水域から発見されたゴカイ科の2未記載種の記載論文、九州・有明海における多毛類24種の10年間の分布変化についてまとめた論文、およびオトヒメゴカイ科とオフェリアゴカイ科の記載論文(共に南九州で新たに発見した知見を含む)を完成させる予定である。また、海岸の潮間帯に最も普通に見られるゴカイ科イソゴカイ属の九州と南西諸島における日本未記録種の分布状況を詳細に調べる予定である。 カイアシ類については、これまで得られた標本類の種同定を行うことを最優先事項として取り扱う。また、これまで得られた種の中には琉球列島の最南部である八重山諸島と最北部付近である三島村海域でのみ発見されている種のように、分布域に空白がみられる可能性が高いものが存在している。これは、黒潮の流路による影響が大きいと考えられるが、今後はこれらに特に注目し、その分布パターンの把握を目指すことを念頭に置き野外調査を実施する。 刺胞動物については、これまでに得られた標本の分子系統解析を含む種同定作業を進め、奄美大島およびトカラ列島浅海域における有藻性イシサンゴ類の種多様性を明らかにしたい。また、加計呂麻島沿岸の砂泥底、奄美群島南部(特に、徳之島―沖永良部島)における海中洞窟などの暗環境、サンゴ礁における夜行性生物に着目することで、イソギンチャク目・スナギンチャク目の未記載種や日本未記録種のさらなる発見に努めたい。
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