研究課題/領域番号 |
17H01917
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松藤 敏彦 北海道大学, 工学研究院, 教授 (00165838)
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研究分担者 |
東條 安匡 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70250470)
黄 仁姫 北海道大学, 工学研究院, 助教 (70447077)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ごみ処理システム / バイオドライング / 固型燃料回収 / 水分除去 |
研究実績の概要 |
MBT施設については,日本国内において稼働中の2施設の調査を1年目に実施した。組成分析および有機物分析によって,組成上は機械選別によってメタン発酵と焼却に効率よく分かれているが,布,プラスチック等には生ごみが付着しておりメタン発酵への回収率は組成でみた場合よりも低く,また生ごみ,紙類などのガス化率は予想されたよりも低く50~60%にすぎないとの結果を得ている。 バイオドライング施設は,日本国内で唯一稼働している施設において調査を行った。生ごみを含む可燃ごみを21日間処理し,乾燥後に固形燃料化原料を回収する施設であり,小粒径物とバルキング材としてチップを循環している。搬入物,搬出物等のサンプリングを行い,組成,水分,有機物量を分析して,搬出物の物質収支をとり燃焼化成分の回収率を算出し,可燃物の約60%が回収されていることを示した。またバイオドライング前後の組成,有機物の変化を推定し,どの成分がどのように変化しているかを示した。また施設は温度をモニタリングしながら空気の循環量,外気取り入れ量を制御している。運転データを用いて水分収支モデルを作成し,施設における水分除去量の変化を定量的に示した。 焼却施設については,特に窒素酸化物に注目し,メーカーと協力して窒素酸化物生成メカニズムの解明,さまざまな炉形式,運転方式の工学的意義の整理を行った。炉形式としては,ごみを上部から供給し,下部からの空気量を必要量以下として部分的燃焼により高温ガスを発生し,それを利用して熱分解を進め,最後にガスを燃焼する竪型ストーカ炉に注目し,その原理をデータ解析によって明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに進行している。 MBT施設においては,最初のプロセスである破砕選別の効率を初めて実測によって明らかにした。水分,組成の焼却,メタン発酵への移行割合を推定し,可燃分は焼却へ,水分はメタン発酵への選別率を評価した。これは従来の考え方と同じだが,本研究では各組成のバイオガス発生量を測定した。その結果,紙類,厨芥の分解率は60%程度に過ぎない一方,プラスチックは付着物のためバイオガス発生ポテンシャルを有している。可燃物組成で見るとメタン発酵への回収率は75%だが,バイオガス発生ポテンシャルにすると65%となることを示し,実施設の設計に有用なデータを提供した。 バイオドライングについては,すでに実験室レベルの研究は終了し,学会に投稿中である。本年度は実施設においてサンプリング,試料分析をおこない,物質フローを明らかにした。さらに1年目に作成したモデルを用いて水分除去の時間変化を推定し,バイオドライングの運転特性を定量的に示すことができた。 焼却については,従来炉と異なる特性をもつ竪型ストーカ炉に注目し,運転データを精査することにより炉内の熱分解,チャー燃焼,ガス燃焼などのメカニズムを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
わが国における廃棄物処理は,焼却を中心としている。発電効率の向上によってエネルギー回収を目指す方向にはあるが,生ごみなどの有機物に対してはメタン発酵と焼却を並行して用いるコンバインドシステムが提案されている。さらに,最初に好気性微生物による有機物分解熱を利用して乾燥し,固形燃料を取り出すバイオドライングの利用可能性がある。本研究はこれらの要素について実システムに基づく研究を行ってきた。最終年度は,これまでの成果を統合して旭川市の総合的ごみ処理を評価・検討し,システム提案を行う。処理シナリオは以下の3つとする。A:高効率発電を有する焼却施設,B:メタン発酵と焼却施設の統合システム(MBT),C:バイオドライングによる可燃ごみの高カロリー化と焼却。これらについて,以下の評価を行う。 1)施設の立地(処分場,焼却施設,メタン発酵/BioDrying)を設定する。旭川市の計画に基づいて決定する。2)現在の収集データを分析して,収集・運搬コストの算定を行う。3)各シナリオについて,物質収支,エネルギー収支を計算する。4)エネルギー,コストによるシナリオ評価を行う。 以上によって,わが国における新たな廃棄物処理システムの可能性を検討する。研究成果は報告書にまとめ,研究室ホームページで公開する。
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