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2019 年度 実績報告書

世界初、パームリサイクルきのこが創るグローバルな環境保全型食料生産システムの構築

研究課題

研究課題/領域番号 17H01923
研究機関鹿児島工業高等専門学校

研究代表者

山内 正仁  鹿児島工業高等専門学校, 都市環境デザイン工学科, 教授 (40239843)

研究分担者 中西 良孝  鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (30198147)
上村 繁樹  木更津工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (60300539)
原 啓文  長岡技術科学大学, 学内共同利用施設等, 客員研究員 (80511071)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2022-03-31
キーワードEFB / OPT / ヒマラヤヒラタケ / パームバイオマス / 家畜飼料 / 資源循環
研究実績の概要

今年度はEFBを堆肥化装置で発酵処理後,ヒマラヤヒラタケ栽培試験に供した.その結果,ゴムおが屑を発酵EFB(FEFB)に置換する割合が増加するに連れて菌糸伸長がはやくなる傾向にあり,FEFB100%区では,培養20日目には培地への菌周りが完了した.またFEFBを用いた試験区の収量は,対照区(ゴムおが屑100%区,針葉樹おが屑100%区)と同等であった.マレーシアでは菌床袋できのこが栽培されている.EFBそのものは粉砕しただけでは繊維が硬く,ピンホールの発生原因となり易いことから,FEFBの培地への利用は実装化を目指す上で有効と考えられた.またパーム樹幹(OPT)の培地への利用も検討した.その結果,OPT試験区ではFEFB試験区と比較して菌糸の伸長が遅く,また子実体発生量も10%程度減少した.OPTには可溶性のリグニン前駆物質が多く含まれており,これが菌糸の伸長を阻害したものと考えられた.
つぎに,FEFB廃菌床の栄養価を明らかにし,それを含む発酵TMRの飼料特性について検討した.ゴムおが屑,針葉樹おが屑,OPT,FEFB等の各廃菌床のin vitro乾物消化率(以下,IVDMD)を測定したところ,FEFB廃菌床で最も高く,33.8%であった.肉用繁殖牛の維持養分要求量を満たすようなチモシー乾草,配合飼料およびパイナップル粕からなる発酵TMRを対照飼料とし,粗蛋白質とTDNがほぼ等しくなるようチモシー乾草と配合飼料をFEFB廃菌床で代替した試験飼料を調製した.その結果,FEFB廃菌床は,チモシー乾草と配合飼料の代替として10%利用しても化学成分,発酵品質,嗜好性および栄養価(IVDMD)に差は認められなかった.
油ヤシプランテーション内土壌の高カリウム化によるパーム油生産量への影響調査については,現地で栽培歴に応じて採取した土壌を分析中である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

未利用パームバイオマス(EFB)を用いた各種きのこの栽培技術の開発に取り組み,マレーシア国内でゴムおが屑を利用して栽培されているヒマラヤヒラタケを,EFBを利用した新培地で栽培する技術を開発した.また現地調査において,プランテーション内に樹幹(OPT)が放置されている状況にあり,OPTをゴムおが屑に代替利用する研究も実施した.現時点では,OPTを培地基材として利用した場合,菌糸の伸長がやや阻害され,子実体発生が対照区より10%程度減少する傾向にあったが,この問題については,OPTをおが屑に加工後,蒸煮したり,水に浸すことで,問題なく利用できると思われる.
FEFB廃菌床の飼料化については,チモシー乾草と配合飼料の一部をFEFB廃菌床に置換し,また発酵を促進させるために,パイナップル粕を加えた発酵TMRを調製し,廃菌床を10%まで代替しても化学成分,発酵品質,嗜好性および栄養価(IVDMD)に差が認められないことを明らかにした.今年度はヒマラヤヒラタケの量産化試験後,大量の廃菌床を用いて昨年度までの成果を基に発酵TMRを調製し,牛による嗜好性を明らかにするとともに,全糞採取法によるin vivo消化試験を行い,TDNを実測する.なお,本試験についてはEEFBに加え,OPTについても実施予定である.
油ヤシプランテーション内土壌の高カリウム化によるパーム油生産量への影響調査については,現地の大学(MJIIT,UTM)等と連携し,土壌サンプルを採取後,随時分析を行う環境を構築している.さらにハラルの概念と認証について,詳しい現地の研究者と話し合い,循環システムのハラル認証を申請するための具体的な方策を練った.
以上の成果により,今年度「パームリサイクルきのこが創るグローバルな環境保全型食料生産システムの構築」を目指し,引き続き研究を進展させる.

今後の研究の推進方策

上述した通り,EFB以外のパームバイオマスの有効利用技術(OPT),廃菌床の家畜消化性を向上させるための研究を遂行していく方針である.具体的には以下の通りである.(1)令和元年度に得られたFEFB培地を用いてヒマラヤヒラタケの量産化試験を引き続き実施するとともに,OPTを用いたきのこ栽培技術も検討する.また,その過程で発生する廃菌床の飼料特性の評価および家畜を用いた飼養試験を実施し,廃菌床の飼料利用可能性を明らかにする.(2)パームプランテーション内土壌を栽培歴に応じて採取し,現地協力機関で随時分析を行い,プランテーション内でのパーム残渣の野積みがパーム油の生産量に与える影響を学術的に引き続き検討する.(3)ハラル認証の申請書を作成するうえで必要な情報収集と現地研究者やハラル認証関係者との情報交換を引き続き行う.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 下水汚泥を用いた食用きのこ量産化技術の開発ときのこ栽培過程で発生するCO2の農業利用への検討2019

    • 著者名/発表者名
      山内正仁, 島田温史, 山田真義, 徳田裕二郎, 八木史郎, 黒田恭平, 香西直子, 山本雅史
    • 雑誌名

      土木学会論文集G(環境)

      巻: 75 ページ: III_443-III_450

    • DOI

      https://doi.org/10.2208/jscejer.75.7_III_443

    • 査読あり
  • [学会発表] Application of empty fruit bunch produced from palm oil manufacturing process for Himalayan oyster mushroom cultivation2019

    • 著者名/発表者名
      Ryoya Yoshimura,Kyohei Kuroda, Yujiro Tokuda, Takahiro Watari, Masayoshi Yamada, Makoto Ichitsubo, Takashi Yamaguchi, Hirofumi Hara, and Masahito Yamauchi
    • 学会等名
      4th.STI Gigaku 2019

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公開日: 2021-01-27  

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