研究課題/領域番号 |
17H01923
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研究機関 | 鹿児島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山内 正仁 鹿児島工業高等専門学校, 都市環境デザイン工学科, 教授 (40239843)
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研究分担者 |
中西 良孝 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (30198147)
上村 繁樹 木更津工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (60300539)
原 啓文 長岡技術科学大学, 学内共同利用施設等, 客員研究員 (80511071)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パームバイオマス / ヒマラヤヒラタケ / 廃菌床 / 飼料化 / 資源循環 |
研究実績の概要 |
本研究では、まずパームバイオマス(EFB:Empty Fruit Bunch)、OPT (Oil Palm Trunk)の用途拡大を図ると共にパームプランテーション内の課題を解決することを目的に、温暖な気候に適したヒマラヤヒラタケの量産化試験を実施した。EFBは堆肥化装置で発酵処理後(FEFB)、またOPTはプランテーション内に放置されることを想定し、水道水に浸す前処理を行い試験に供した。その結果、これらのバイオマスを用いた試験区の収量は既存基材を用いた対照区と同程度であり、統計的有意差は認められなかった。また子実体の成分分析結果から、基材の違いによる顕著な成分変化は認められなかった。 つぎにFEFB、OPT主体培地に由来するヒマラヤヒラタケ廃菌床の反芻家畜用飼料としての利用可能性を検討するため、廃菌床の化学成分、栄養価を明らかにした。その後、廃菌床(全配合飼料、粗飼料の0-10%を代替)等を用いて、肉用繁殖牛(体重450kg)の1日当たりの維持養分要求量を想定した飼料設計を行い、各区3反復で発酵TMRを120L容プラスチックドラム缶に調製し、1ヵ月以上貯蔵した後に化学成分、発酵品質及び黒毛和種繁殖牛による嗜好性を調べた。その結果、フリーク評点は全区とも90点以上であり、区間差はなく、評価は全て「優」であった。また嗜好性評点は全区とも±1.0以下であり、平均嗜好度に区間差はみられなかった。このように発酵品質および嗜好性に区間差がみられなかった。さらに対照区、FEFB10%区、OPT10%区の発酵TMRの3区をラテン方格法により山羊に割り当てて、全糞採取法によるin vivo消化試験を行った結果、TDN含量はそれぞれ59.9、57.3及び56.4%であり、区間差は認められなかった。以上の結果から、パームバイオマス廃菌床は既存の家畜飼料の代替として利用可能なことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パームバイオマス(EFB、OPT)を用いたヒマラヤヒラタケ栽培技術の開発に取り組み、マレーシア国内のきのこ栽培で利用されているゴムおが屑に代替としてこれらのバイオマスが利用できることを明らかにした。 具体的には、EFBについては、発酵処理を施し、基材の安定化を図り、加えて繊維成分を柔らかくすることで、菌床袋のピンフォールを防ぎ、子実体を安定的に発生させる技術を開発した。またOPTについては、プランテーション内に輪切りにされ放置されていることから、針葉樹を食用きのこ栽培に利用する時と同様、水に浸す前処理を行うことで、子実体を安定的に発生させることに成功した。 FEFB廃菌床、OPT廃菌床は、チモシー乾草(以下、チモシー)、和牛繁殖牛用配合飼料、パイナップル粕(パイン粕)の一部代替(全飼料の0-10%代替)資材として飼料設計を行い、発酵TMR飼料を調製し、その品質評価と黒毛和種繁殖牛を利用した嗜好性調査および山羊を利用した全糞採取法によるin vivo消化試験の結果、パームバイオマス廃菌床は、チモシー、パイン粕等の一部代替として10%まで利用できることを明らかにした。次年度(R3年度)は、構想システムの最終段階である家畜排泄物とパームバイオマスを用いた堆肥化試験を実施し、製造した堆肥の腐熟度、窒素無機化率およびその堆肥を用いた作物栽培試験を行い、堆肥の有効性を検証することで、本研究の最終目標であるパームリサイクルきのこが創るグローバルな環境保全型食料生産システムを構築できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上述した通り、これまでの研究において、EFBおよびEFB以外のパームバイオマスの有効利用技術(OPT)、きのこ栽培過程で発生する廃菌床は家畜飼料として利用できることを明らかにした。最終年度はパームバイオマスの他食用きのこ栽培への利用を検討するために、栽培期間の長い温暖な気候に適したアラゲキクラゲ栽培を試みる。また、廃菌床含有飼料を給与した家畜から排出された排泄物とパームバイオマスを用いて堆肥を調製し、その堆肥を用いて作物栽培試験を実施し、その有効性を検討する。さらに、ハラル認証の申請書を作成するうえで必要な情報収集と現地研究者やハラル認証関係者との情報交換を引き続き行い、「パームリサイクルきのこが創るグローバルな環境保全型食料生産システムの構築」を目指す。
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