研究課題/領域番号 |
17H01926
|
研究機関 | 公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所) |
研究代表者 |
常松 展充 公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所), 環境資源研究科, 研究員(主任) (80524462)
|
研究分担者 |
日下 博幸 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (10371478)
市橋 新 公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所), 環境資源研究科, 主任研究員 (40727905)
本條 毅 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (60173655)
原 政之 埼玉県環境科学国際センター, 温暖化対策担当, 主任 (90399569)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 都市高温化 / 都市緑化 / 大気汚染 / トレードオフ / 大気化学輸送モデル / 熱流体モデル / LES / GIS |
研究実績の概要 |
研究計画調書に則り、東京都市圏を対象として、次のとおり、都市高温化、大気汚染、都市緑化の相互作用とトレードオフに関する調査研究を行った。 ・大気汚染の改善が都市高温化に及ぼす影響を調べることの一環として、大気汚染が改善することによる日射量及び地上気温への影響を分析するための数値シミュレーション(感度実験)を試行した。その結果、近年の大気汚染改善に伴い、夏季晴天日における地上気温は、日射量の増加によって0.5℃程度上昇した可能性が示唆された。 ・都市高温化が大気汚染に及ぼす影響を調べることの一環として、大気化学輸送モデルを用いて夏季を対象とした気候変化シミュレーションを実施した。その結果、過去気候に比べて現在気候では、東京付近を中心に高温域が形成され、硝酸ガス濃度の高い範囲が拡大し、近年の光化学オキシダント濃度の高止まりと関係している可能性が示唆された。 ・都市緑化と都市高温化の調査の一環として、熱流体モデルを用いた数値シミュレーションやLES(Large Eddy Simulation)を実施し、暑熱環境改善のための緑と建物の効果的な配置を分析した。その結果、建物の風上側に緑を多く配置することにより、建物の風下側にクールスポットが形成されやすいことが示された。また、SfM(Structure from Motion )による緑地および都市の三次元表面温度計測と解析、DSM(Digital Surface Model)による都市快適感指標の計算方法の開発、ヒートアイランド現象解析のための高密度測定ネットワーク構築と解析手法の開発を行った。 ・都市緑化と大気汚染との関係を調べることの一環として、都内の街路樹分布のGIS(地理情報システム)化を行った。 ・都市高温化が大気汚染に及ぼす影響を調べることの一環として、境界層パラメタリゼーションが大気境界層高度の再現精度に及ぼす影響を検証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東京都市圏を対象として、各数値モデル(大気化学輸送モデル・熱流体モデル・LES等)を用いたシミュレーション等により、都市高温化、大気汚染改善、都市緑化の間に存在する相互作用とトレードオフに関する調査を順調に進めている。 また、本研究では、それら三者間の相互作用やトレードオフに関する調査のみならず、上記の数値シミュレーション結果から得られる出力変数等を用いて、今後、都市高温化、大気汚染、都市緑化の間のトレードオフをバランスさせる最適解を算出(次項「今後の研究の推進方策」参照)し、「どれだけ暑熱緩和するのが良いのか」「どれだけ大気汚染を改善するのが良いのか」「どれだけ都市緑化するのが良いのか」について定量的に明らかにする。これにより、より快適で持続可能な都市大気環境の創出のためには、どの大気環境問題にどれだけの対策費を投じれば良いのか、その最適なコスト配分を検討するうえで役立つ科学的知見を得る予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画調書に則り、次のとおり研究を推進する。 ・大気汚染の改善が都市高温化に及ぼす影響を調べるための数値シミュレーションを引き続き実施する。その際、都市化に伴う地表面アルベドの変化や地球温暖化による影響も考慮した数値シミュレーションを行う。 ・これまでに作成した街路樹GISデータを大気化学輸送モデルの排出インベントリに組み込み、BVOC(植物起源揮発性有機化合物)が光化学オキシダント等の大気汚染物質濃度に及ぼす影響を分析する。その際、BVOC放出量に関する既存の実地計測結果や樹木の葉面積分布に関する衛星画像解析の結果も用いる。 ・SfM(Structure from Motion )による緑地および都市の三次元表面温度計測と解析、DSM(Digital Surface Model)による都市快適感指標の計算方法の開発、ヒートアイランド現象解析のための高密度測定ネットワーク構築と解析手法の開発を引き続き行う。 ・境界層パラメタリゼーションが大気境界層高度の再現精度に及ぼす影響の検証を引き続き行う。 ・各数値モデル(大気化学輸送モデル・熱流体モデル・LES等)によるシミュレーション結果から得られる各変数について、重回帰分析等の多変量解析を行い、都市高温化、大気汚染改善、都市緑化のそれぞれに関する説明変数(気温・湿度・地上オゾン濃度・葉面積等)に対し、最適な都市大気環境の指標となる目的変数を算出する係数を求める。その目的変数には、WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)やMRT(Mean Radiant Temperature)といった体感温度指数、大気汚染環境基準、都市開発時の環境配慮に係る制度による緑化基準等を適用する。こうして、快適な都市環境の創出という観点から、それぞれの目的変数について、三者間のトレードオフをバランスさせるための最適解の算出を試みる。
|