研究課題/領域番号 |
17H01929
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
村山 武彦 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (00212259)
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研究分担者 |
錦澤 滋雄 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (70405231)
長岡 篤 麗澤大学, 研究センター, 研究員 (40706561)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 環境リスク / 非常時 / 化学工場 / 防災対策 / 避難計画 |
研究実績の概要 |
本年度は、化学工場、特に石油コンビナート等における事故時の地方自治体の対応の現状と課題を明らかにすることを目的として、住民に、素早く、適切な情報が伝達されているかという視点から、地方自治体に対する質問紙調査を実施して、現状と課題を明らかにすることを試みた。具体的な対象として、「石油コンビナート等災害防止法」の規制を受ける特定事業所と想定するとともに、各自治体が、環境影響の情報を含め、住民に情報を伝達する場合の時期や課題という課題に関する視点を中心に、事故時の対応の現状と課題に関する質問票の項目を検討した。 調査対象は石災法に基づく特別防災区域に指定されている32道府県と102市町村、計134の自治体とし、郵送法により質問紙の配布回収を行った。実施時期は、2017年6月中旬~8月中旬であり、90の自治体から回答が得られた(回収率67.2%)。 本調査による主な結果は、次のとおりである。石災法が定める石油コンビナート特別防災地区における過去5年間の災害件数は20件以上の自治体が4分の1程度を占めた。また、災害のマニュアルを作成している自治体は全体のほぼ半数にとどまっている。通報/収集/伝達の体制づくりについて、協議組織に周囲市町村、報道機関、学識経験者を含めているのは半数以下で、会議体や研修等の定期的な実施は限定的である。災害時の環境影響への対応は半数以上が石災法の枠内で実施しているが、3割弱が地域防災計画を準用している。また、平時の環境部局との連携については計画や協議会等での参加にとどまっている。周辺自治体への情報伝達を防災計画に明記している自治体は約56%で、住民への情報伝達の範囲を事前に規定している自治体は約14%であった。また、避難計画や訓練の実績は半数であることから、事前の取り組みに差がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の調査により国内の全国的な状況は把握できた一方で、今後、個別地域のより詳細な状況を把握する必要がある。 また、当初予定していた米国の調査が相手先の事情もあり先送りになったことから、本年度の適切な時期に実施し、国内の状況と比較検討することとしている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の調査の結果から、非常時の環境リスクに対して取り組みが進んでいる地域を抽出し、より具体的な内容に関する現地調査を実施し、当該地域の関連制度の運用状況、所管している工場群における非常時のリスク評価や防災対策の状況を明らかにする。 米国における全国的な運用状況ならびに適用事例の調査を実施する。運用状況の調査については、化学工場のリスク管理を担当している環境保護庁(EPA)の担当部局で面接調査を行い、ほぼ30年間運用しているワースケースのシナリオに基づくリスク管理計画の策定の現状と課題を明らかにする。 さらに、EUが進めている化学工場の事故対策の枠組みであるセベソⅢ(一定の産業活動に伴う重大事故の危険性に関するEU指令)の運用状況を把握するとともに、個別の工場で実施されている具体的なリスク管理計画や事故時の防災対策の状況に加えて、周辺住民への情報提供やコミュニケーションの状況を調査する。 その後、アジアの他地域の制度や運用状況を把握した結果を踏まえて、日本における取り組みの特徴を明らかにするとともに、今後進めるべき方策の内容を具体化する。
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