研究課題/領域番号 |
17H01932
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
新保 輝幸 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 教授 (60274354)
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研究分担者 |
中西 康博 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (60246668)
中村 崇 琉球大学, 理学部, 准教授 (40404553)
中村 洋平 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 准教授 (60530483)
安元 純 琉球大学, 農学部, 助教 (70432870)
婁 小波 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (50247970)
三浦 大介 神奈川大学, 法学部, 教授 (30294820)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 環境政策 / サンゴ礁保全 / 海洋保護区 / 与論島 / フィリピン / 沿岸域の総合的管理 / 共的管理 |
研究実績の概要 |
鹿児島県与論島:1)9月中旬に礁池内・外の計18個所で潜水調査を実施、主に底質の組成及びサンゴの属組成を調べ、礁池内でのサンゴ群集の潜在的な回復力が著しく低い状態であるが示唆される結果を得る。2016年の調査データと比較、与論島で芝状藻類の被度が過去2年の間に増加傾向にある事を示す。結果を与論町のNPOと共有、今後の調査計画協議。2)硫安のサンゴ礁生態系への経時的影響評価のため,サンゴ礁礁池内外で採取したテーブルサンゴの骨格中に含まれる硫黄の安定同位体比を2ペア計測、いずれの試料も同位体比は経年的に下降傾向にあることを明らかに。3)礁池内に堆積するセディメントの由来同定のための前実験に供する試料を採取。4)東海岸域における琉球石灰岩帯水層からの非常に速くて局所的な海底湧水の湧出速度連続モニタリングと栄養塩濃度測定を実施、海底湧水の湧出速度は干潮時に最大220,752m/年,平均79,786m/年であり、他地域の既存調査に比べ非常に速い流速の海底湧水の存在を確認。海底湧水中の窒素濃度は地下水と大きな差はないが、リン濃度は海底湧水が地下水の9~10倍であることを見出した。 フィリピン:1)ビコール地方の3海洋保護区((MPA)で実態調査。特にAtulayan MPAに関し、周辺村落の漁業者世帯に無作為抽出による質問紙調査を実施、社会経済的な条件やコミュニティの社会関係資本、MPAに対する意識や管理への参加状況等に関するデータを収集。2)沿岸開発で損なわれやすいサンゴ礁周辺ハビタットがサンゴ礁生態系において果たす役割を明らかにするために、ミンダナオ島の潮間帯海草藻場で乾季(5月)と雨季(12月)に採集した魚類を解析、潮間帯の海草藻場がどの季節も多くのサンゴ礁魚類の餌場として満潮時に利用されていることを示した。 自然資源を公物とみなし、利用調整を公物管理の枠組で行う方途を法学的に検討。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね順調に進展している。しかし、鹿児島県与論島が環境省の地域が主体となって取り組むサンゴ礁生態系保全の推進体制を構築するためのモデル事業が与論町のNPOを中心に導入され、本研究の共同研究者の一部が参加することになった。そのため本研究の調査項目の一部がその事業で行えることになった。そこで新たに、この間のヒアリング等で得た情報により立てられた「サンゴ礁池内に堆積するセディメントがサンゴの回復を妨げているという可能性がある」という仮説に基づく調査を行うことになった。また現地のコンタクトパーソンを務めていただいていたNPO代表者が昨年夏に死去し、NPOの体制も一新された。そのためこの間社会科学的研究の部分が停滞したが、現在新体制のスタッフと連携するために信頼関係の構築に留意している。 フィリピン・ビコール地方のAtulayan海洋保護区での大規模世帯調査は、現地の研究協力者の一人が学長に就任し多忙となったため現地の若手研究者の協力を得て推進中であったが、調査期間中に現地が大雨による大規模な土砂災害に襲われ、一部村落での調査が不可能になった。しかしその時点で大部分のサンプルに関して調査が完了しており、可能な範囲のデータ分析を行うため、現在データ・エンコーディングの作業中である。
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今後の研究の推進方策 |
代表者が死去した鹿児島県与論島の現地NPOとは、今後も新体制のスタッフと連携し、協力していくことができる見込みである。今年度は年度内に現地で成果報告会を行う予定であり、今後調整を進めていく予定である。 また与論島における環境省のモデル事業との関係で、本研究から切り離した調査課題の代わりに行うことになったサンゴ礁礁池内のセディメント調査は既に試料採取を行っており、順次分析を行っていく予定である。 フィリピン・ビコール地方のAtulayan海洋保護区に関する大規模世帯調査は、調査地域の一部村落が災害に襲われ調査不能になったが、その時点で大部分のサンプルの調査が完了しており、それらの村落を除いたデータ分析を行う予定である。現在データ・エンコーディング中であり、データセットが完成し次第、分析に入る予定である。
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