研究課題/領域番号 |
17H01935
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
近藤 正規 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (30306906)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 開発 / 環境 / アフリカ / アジア |
研究実績の概要 |
2019年度も前年度に続き、多くの企業を訪問してデータを入手した。今年度は新しく世界銀行のビジネス環境指数の構成要因となっている政策のそれぞれが個別企業の環境経営にどのような影響を与えているか、昨年の同指数の改善が外部要因としてどの程度重要であるかを統計的に分析した。その結果、新しい変数の追加を今後の調査においても継続するかどうかはこの調査結果だけでは明らかにしにくいことも認識された。 地域別には、アフリカにおいては南アフリカとエチオピアにおける企業及び業界団体を訪問して、企業プロファイル・環境経営等に関するデータ及び当該諸国における多国籍企業の実態調査を行った。その中でも南アフリカはシンガポールに近くハブとしての拠点が多く、またエチオピアでは労働集約型産業の発展が顕著であるため、重点的にデータを収集した。また治安の面から実際に訪問できなかった企業については、インターネットによりデータを収集した。 アフリカとの比較対象として調査を行っている南・東南アジアでも継続してデータ収集を行った。多国籍企業のグローバルサプライチェーンにおいて非常に重要な台湾においては通信機器や電子機器を始めとする業種の大手下請け企業がどのような人事マネジメントを行なって、環境保全や安全確保に留意しているかのデータを重点的に収集した。また取引先の中国企業との交渉における当該企業の交渉状況についても明らかにできた。次にインドでは、東部と南部を中心に調べ、資源依存型の東部と労働集約型の南部の比較を行った。また東部は最近自然災害に見舞われており、それに対する企業のCSR活動の調査も行った。またシンガポールにおいては、ロジスティックスからエネルギー関連に至るまで海外との取引比率の高い大手地場の多くの企業を訪問してデータ収集を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は所属大学のサバティカル期間に当たっていたため、出張のための日程の確保がしやすかった。ただし、サバティカル自体は事前に計画されていたため、これに伴う大幅な計画の前倒しといったことはなく、事前に計画通りのデータ収集を行うことができたと考える。訪問先の企業において、どのような人事マネジメントを行なって品質の向上やコスト削減だけでなく、環境保全や安全確保に留意しているかのデータも重点的に収集して分析を行い、さらに産業別及び企業規模による違いがどのくらい環境保全において重要性を持つか、それが他の要因とどのくらいの差があるかを分析できたので、大きな収穫があったものと考える。 このようにこれまでのところ研究は順調に進んでいるが、2019年度末頃から想定外の新型コロナウイルスによる世界的な問題が拡大した。2020年2月までの時点ではその後実際に来たような状況になるとは正直なところ想定していなかった。そのため、2020年度においてもこれまでと同じようなデータ収集を続けていくことが可能かどうかについて、十分な検討を行う余裕がなかった感もないわけではない。そのため、今後の対応については下記の通り現在さまざまな観点から検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も昨年度と同様に企業データ収集を続けていく予定である。しかし、現時点では新型コロナウイルス感染症の影響で、大半の諸国が入国禁止になっており、状況しだいによっては研究計画のすくなからぬ見直しが必要となる可能性がある。とりわけ本研究で対象としているアフリカやインドなどの発展途上国では、コロナウイルスの患者数が減少に転じておらず、先行き不透明感が少なからずある。とりわけ一部の情報ではアフリカでの患者数が急増するのはこれからだという見方もあり、予断は許されないものと考える。 他方で、このような難しい状況において、これらの国々で活動を行う企業が従業員の安全や地域との共生にどのような手段を講じているのかを調査することは、興味深い研究テーマである。当面はインターネットベースで情報を収集していくこととしたいが、そのためにどのようなことを聞くかを十分に事前に整理しておく必要があり、内外の研究者とビデオ会議棟で情報交換を行っていきたい。また、新たに収集するデータもさることながら、今後これまでのサーベイの基準に基づいて収集するデータもこれまでとはあらゆる点で前提が異なる状況下でのデータ収集となるため、2019年度までに収集したデータとの比較をする上で少なからぬ支障が生じる可能性がある。この点においても対策をを講じていく必要があると考える。
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