本年度においては、アジアにおける最貧国において海外直接投資が環境に与える影響を調査して、アフリカ諸国との比較を行った。前年度までは、アフリカにおいて、天然資源の輸出が為替レートに及ぼす影響が環境悪化につながっていることが明らかにされていた。 本年度ではバングラデシュとラオスという、南アジア及び東南アジアにおいて最も所得水準の低い国において企業調査を行い、とりわけ中国企業の投資の増加とホスト国の環境に対する影響についての計量的な調査を行った。さらに、アジアとアフリカに多くの投資を行っている企業のアジア統括拠点があるシンガポールにおいて、これらの企業の海外投資における環境問題へのと陸について、詳細な調査を行った。 バングラデシュではアパレル産業を中心として、輸出志向の地場企業の育成が進む一方で、開発独裁的な政権の下で、大気汚染や水質汚染といった環境問題に対する配慮が不足しがちであるのと比べて、ラオスにおいては、中国の昆明とラオスの主要都市を結ぶ鉄道の建設などの大型の援助案件と華僑によるラオスの不動産投資が海外直接投資の受け入れの大部分を占め、製造業の育成がなされていないことが明らかとなり、それぞれ天然資源の開発が中心となっているアフリカの開発途上国とは異なった状況になっていることが明らかとなった。最後に、アフリカ、バングラデシュ、ラオスに共通していることとしては、ホスト国のガバナンスが環境保全に対して大きな影響を与えること、ホスト国と直接投資を行っている企業の親会社の国との力関係も大きな要因となっていることもデータから明らかにされた。研究結果については現在、書籍にまとめているところである。
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